御刀さまと花婿たち

 季節はゆるやかに移ろい、水無月。
 水たまりに陽光がきらめく昼下がり。
 鼓御前(つづみごぜん)は、ひなとともに歩道を歩いていた。

「お手数をおかけしました、鼓御前さま」
「いえ! わたしもひさしぶりにおでかけできましたし、お手伝いができてうれしいです」

 鼓御前とひなの手には、買い物袋がひとつずつ。
 この日、長くふり続いていた雨があがり、数日ぶりに晴れ間がのぞいた。
 休日で授業もないということもあって、鼓御前はひなの買い出しに同行したのである。

「それにしても、ふぅ……小一時間歩いただけなのに、すこし疲れてしまいましたね。運動不足かしら」
「夏が近づいて、気温も高くなってまいりましたものね。梅雨が終わると、一気に暑くなります。その前に衣替えをいたしましょう」

 うっすらと汗を浮かべ、ぱたぱたと手のひらで顔をあおぐ鼓御前に、ひなはくすりと笑みをもらす。
「ひゃっ……!」と短い悲鳴が耳に届いたのは、そんなときだ。
 反射的に鼓御前が視線を向けると、前方にうずくまった人影が。

「いたた……あぁ、どうしましょう……」

 鼓御前よりも小柄な人影。老婆だ。
 アスファルトの凹凸につまずいたのだろうか、地面に座り込み、そのまま立ちあがれずにいる。
 まわりには、買い物袋から転がり出たにんじんやじゃがいも、玉ねぎが散乱していた。

「まぁ、たいへん!」
「あれは……大丈夫ですか、ふゆおばあちゃま!」

 鼓御前とひなが駆け寄ったのは、ほぼ同時のことだった。