* * *
「──あんたは、なにを考えてる?」
神社からの帰り道。
唐突な桐弥からの問いに、千菊は首をかしげる。
「なにを、とは?」
「白々しい」
もとより腹の中が読めない男だ。
はぐらかされるとは思ったが。
桐弥は厳しく細めた紫水晶のまなざしで、千菊を射抜く。
「あんたの行動には無駄がある」
「と言いますと」
「蘭雪公。史実をなぞれば、『鼓御前の主』にふさわしいのはあんただ。このままいけば、じじいどもに有無を言わさずあいつの覡になれただろう。だがあんたはそうしなかったな。わざわざ僕たちを巻き込んだ」
つと、千菊が歩みを止める。
暗がりに目をこらしても、千菊がどんな反応を見せるのか、うかがうことは難しい。
「鬼塚の小僧に関してもそうだ。あの小僧が天に憧れていると知って、わざと刺激するような真似をしたな。なぜだ?」
じっと見据えた桐弥の視界で、純白の衣が夜風になびく。
「あやかしたちが力を増しています。ここ十五年ほどのあいだに、急激に」
やがて千菊が口にしたのは、脈絡もないこと。
だが聞き流すべきではないことだと、桐弥は直感する。
「今回も、結界が張りめぐらされている寮の裏山に〝慰〟が出現しました。先日現れたものより大型で、凶暴な個体です」
「それで?」
「なにかよくないことが起こる、前ぶれやもしれません」
「なるほどな」
千菊の話は核心にはふれない。
しかし、言わんとすることはなんとなく理解できた。
「あんたがなにを知っていて、なにをしようとしているのか、どうせ話すつもりはないんだろうが」
これだけは、はっきりさせておくべきだろう。
「──天を泣かすことだけは、してくれるなよ」
すぐに答えはない。
桐弥も返事を待つつもりは毛頭なく、颯爽と千菊を追い抜く。
ふくろうがきまぐれに鳴く夜道で、千菊はたたずむ。
そして冷えた夜風に吹かれながら、ぽつりと独りごちる。
「私は──知りたいのです。『真実』を」



