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鼓御前に代わり、青葉時雨が蘭雪の実戦刀となった。
数々のいくさ場を駆け抜け、敵を屠った。
それでも蘭雪は鼓御前を肌身離さずそばに置いていたし、いくさ後も青葉時雨の手入れを怠ることはなかった。
(おれと、姉さまと、あるじの三人でいるんだ。ずっと……!)
青葉時雨はそう信じて疑わなかった。
けれど、時の流れとは残酷なもので。
たったの数十年そこらで、蘭雪は死んでしまった。
『うそつき……いっしょにいようって言ったくせに……あるじのうそつき!』
『青葉……』
蘭雪の墓の前で、泣きわめく青葉時雨。
そんな弟の背に、鼓御前はそっとふれる。
『あるじさまは天寿をまっとうされたのです。それならばわたしたちも、公が生前望まれたように』
『……うん』
わかっていた。人の一生が、儚いものであることは。
だから鼓御前も、青葉時雨も、ともに墓に入ることにした。蘭雪がそれを望んだからだ。
蘭雪の遺言を受け、彼の家臣がふた振りの刀を遺骨とともに埋める。
(あぁ……これでおれたちは、だれにも、邪魔をされずに……)
大丈夫だ。たいせつなひとがそばにいるから、さみしくはない。
土に埋もれた暗い暗い世界で、青葉時雨はそっと意識を手放す。
あとには、深淵のような静けさにつつまれるだけ。
──けれど。
だれかのそばにいたいというささやかな願いさえ、突然打ち壊される。
『……あるじ……あるじ!』
滝のような土砂降りの夜のことだ。
蘭雪の墓が、何者かによって掘り起こされたのである。
『姉さま……どこにいるの、返事してよ、姉さま!』
ざあざあと、冷たい雨がふりそそぐ。
『ねぇ、おれを独りにしないでよ……あるじ……姉さまぁっ!』
冷たく凍える雨の夜、青葉時雨は独り慟哭した。
ぱきんと、みずからの命が折れる音を、最期に聞きながら。



