御刀さまと花婿たち

 ──忌み子め。

 呪われた子のままでいるわけにはいかない。
 莇は、努力しなければならなかった。努力することは、当然だった。
 そして血のにじむような努力の末になにかを達成しても、周囲のおとなたちはほめてなどくれなかった。
 どれだけあがいても、莇が忌み子であることに変わりはなかったから。

「……鼓御前さまを傷つけてしまったことは、ひとえに、わたしが未熟であったことが原因です」

 憧れのひとを、この手で傷つけてしまったこと。
 何度も思い返し、何度でも悔やむ。

 葵葉はきっと、たいせつな姉を傷つけられ、莇へ怒りをあらわにしているのだろう。
 その激情は正当なものだ。
 ……けれど。

「わたしがわたし自身を責めることを、鼓御前さまはお望みになられなかった」

 ──はやく おげんきに なりますように。

 何気ない言葉に、どれだけの真心が込められていたことだろう。
 文を贈られたとき、莇ははっとした。
 後悔ばかりで立ち止まったままでは、なにも変われやしないのだ。そう気づかされた。

「ですから、わたしは心に決めたのです。おやさしいあの方を二度と傷つけはしない。そのために強くなるのだ──と」
「ハッ、きれいごとだな」

 葵葉は鼻を鳴らし、莇の言葉を一蹴する。

「おまえ、ほんとうの孤独っていうのを知らないだろ。……だれにも必要とされず、じぶんがなぜ生まれてきたのかもわからない。そんな地獄みたいな思いを」

 葵葉は莇を見ようともしない。
 常磐(ときわ)色のまなざしは暗い影をおび、虚空を見つめている。

「俺はずっと独りだった……けど姉さまだけは俺のそばにいてくれた。姉さまは俺のすべてなんだ。それなのに……おまえが姉さまを奪っていこうとするから!」

 怒りに任せて、葵葉は地面を殴りつける。

「姉さまには俺がいればいいんだよ。人間の世界なんて知る必要はない。なのに、ずかずかと土足で踏み入りやがって……俺と姉さまをぐちゃぐちゃに引き裂いて、楽しいかよ!?」

 夜の闇がゆれる。
 心の底から、葵葉は憤慨していた。
 その怒りを一身に受け、莇はぐっとくちびるを噛む。

「……なら、こちらも言わせてもらいますが」

 いけない、『この感情』は。
 黒くて、どろどろして、『よくない感情』だ。
 だけれど莇は、それをもうおさえきれそうになかった。

「おれだって、あなたのことが嫌いだ」

 あぁ、言ってしまった。
 一度口にしてしまえば、堰を切ったようにあふれだす。
 言葉が、感情が。