御刀さまと花婿たち

「あ~ねさまっ」
「きゃっ……!」

 莇と立ち話をしていた鼓御前は、突然うしろへ引き寄せられるのを感じた。
 腰にがしりと腕が絡みついており、身動きがとれない。鼓御前が困ったように見上げると、案の定笑顔の葵葉にのぞき込まれていた。

「もう、葵葉ったら……いきなりびっくりするでしょう」
「一限目は移動だろ? 俺と行こうよ、姉さま」

 鼓御前がたしなめても、葵葉は聞いているようで聞いていない。

「失礼ですが。ぶしつけに御刀さまへふれるのは、いかがなものかと」

 どうしたものかと鼓御前が考えていると、莇が苦言を呈した。葵葉も負けじと反論する。

「俺の姉さまにふれてなにが悪い。ひがみはよせよ」
「弟であることが事実だとしても、いまのあなたは人の身です。御刀さまの意に添わぬ言動は見過ごせません。立場をおわきまえください」
「はぁ? 俺が姉さまに無理強いしてるとでも言いたいのか?」
「ちょっ、ちょっと待ってください、ふたりとも落ち着いて!」

 みる間に、教室に剣呑な空気がただよいはじめる。
 慌てて仲裁する鼓御前だが、莇と葵葉は睨みあったまま。

「一年生のみなさん。これから三年生の先輩方と、合同授業ですよ。遅れないようにしましょうね」

 そこへ、どこからともなく千菊が現れる。

「なんてタイミングのいい……」

 ぼそりとつぶやく葵葉。
 千菊はなにを思ったか。竜頭面からのぞく口角をゆるりと持ち上げて、こうのたまう。

「『みんな仲良く』──ですよ」