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本日も晴天なり。
しかし、陽だまりの射し込む教室で黒板を背にした鼓御前は、そわそわと落ち着きがなかった。
というのも、向かって左側に立っている莇のことが、気になって気になって仕方なかったため。
「莇と申します。新入生代表として、学級委員長の役職をたまわりました。せいいっぱいつとめさせていただきます。よろしくお願い申しあげます」
よどみなく言葉をつむぎ、完璧な角度で礼をする莇。
洗練された言動は、一目で育ちの良さをうかがわせる。
「御刀さまとおなじく、莇さんも今日から復帰します。みなさん仲良くしましょうね」
教卓の前で、千菊がおだやかに生徒たちへ語りかけるが──
「姉さまと肩をならべるとか何様だ。ふざけてんのか。離れろ離れろ離れろ……」
なにやら教室の奥のほうから、怨念のような言葉がきこえてくる。
言わずもがな。
最後尾にある窓際の席で腕組みをした葵葉が、心底不機嫌そうに莇を睨みつけている。
(えーっと……仲良く、できるかしら?)
相変わらず攻撃的な弟の様子に、鼓御前は早くも不安をおぼえるのだった。
──そのとき、鋭く細めた瞳で葵葉を睨み返した莇のことを、鼓御前は知らない。
〝慰〟との闘いで、莇は全治二週間の重傷を負ったはずだ。
「お怪我は大丈夫なのですか?」と恐る恐る問う鼓御前へ、莇はうなずいてみせた。
「ご心配にはおよびません。わたくしは鬼塚の家系でも、特別回復が早い体質なのです」
そのため通常なら回復まで二週間かかる頭部外傷も、三日で完治したのだと。
「治るのが早くても、痛い思いはしてほしくありません。これからは、無理はなさらないでくださいね……?」
心配のあまり泣きそうになっている鼓御前を目にして、莇ははたと呼吸を止める。
それから、ぽ……とかすかにほほを朱に染めた。
「……そんなふうに心配してくれたひとが、ほかにいただろうか」
「莇さん? お顔が赤いです。もしや体調が……?」
「あっいえ、お気になさらず!」
と、このような鼓御前と莇のやりとりが、朝のホームルーム後にくり広げられたのだが。
「あれは、決まりだな」
「あぁ。ぜったい好きだろ、委員長」
なにせ、鼓御前に対する莇のいろんな感情が、だだ漏れなので。
一連のやりとりをながめていたクラスメイトたちは、ほぼ全員察していた。
気づいていないのは、おそらく鼓御前本人だけだろう。
「いくら名門鬼塚家出身の委員長でも、鼓御前さまのお付きの覡になるのは難しいよなぁ……」
なぜなら、すでに圧倒的な存在感を放つ三名が、覡候補の座に君臨しているから。
まぁ、そのうちの一名は、かなりの厄介者のようだが。



