御刀さまと花婿たち

 神梛(かんなぎ)高等専門学校。
 門をくぐり、玉砂利の細道を抜けたなら、重厚な瓦屋根が目を引く木造二階建ての建物が見えてくる。
 この場所こそが、神職者を養成する学び舎である。

「そういえば、たのまれごとをされてたのを思いだしたわ」

 校舎へ到着するなり、虎尾がわざとらしく切りだす。
 これに桐弥は嘆息した。
 そもそも神社を出るさいに、鼓御前の付き添いはじぶんだけで事足りると主張した。
 にもかかわらず、「行き先はおなじなんだからいいじゃな~い?」と笑顔で押しきられてしまった。
 その時点で嫌な予感はしていたのだ。

「そういうわけで、つづちゃんはアタシと行きましょうねっ!」

 じとりと睨みを寄こす桐弥などおかまいなしに、虎尾は鼓御前の手を引っぱってゆく。
「花ちゃんおねぇさま!?」とわけもわからないままに、鼓御前が後をついていくと。

「おはようございます、御刀さま」

 虎尾に案内されたのは、一階にある教員室だった。
 そこで、物々しい竜頭の面をつけた青年に出迎えられる。
 虎尾はというと、「ちゃんと送り届けたからね~」とだけ言い残して、教室のある二階へさっさと向かってしまった。

「おはようございます、あるじさ……ではなくて、先生」

 千菊がかしこまったあいさつをするので、鼓御前もそれにならった。
 しかしぎこちなく会釈をしたところで、くすりと頭上で笑みがこぼれる。

「急に呼んでごめんなさい。虎尾先生が出勤前に神社へ寄るとのことでしたので、きみをつれてきてほしいとお願いをしたんです」
「あのう、わたしになにか……?」
「つづも今日から本格的に学校生活がはじまるでしょう? その前に、あらためて紹介しておこうかと思いまして」
「紹介……ですか?」
「はい。きみのサポート、手助けをしてくれる学級委員長さんです」

 千菊はそういって、おもむろにふり返る。
 そこでようやく、鼓御前は気づくことがあった。
 千菊のうしろに、少年がひとり。

「あなたは──!」

 その少年を目にした鼓御前は、驚きをかくせない。

「……先日は、お手紙をありがとうございます。鼓御前さま」

 ──莇だ。
 間違いない。
 学ランを身にまとった莇がすこし照れくさそうに、鼓御前の目の前ではにかんでいた。