御刀さまと花婿たち

 わけもわからずにいると、莇はふと、指先の違和感に気づく。
 一枚の紙にしては、厚い。
 それもそのはず。
 一筆箋のうしろに、同封されているものがあったのだ。
 押し花の栞だ。
 白い和紙にたんぽぽの花が一輪だけおされた、素朴な栞。

「……あぁ」

 とたん、ため息にも似た感嘆が莇の口からこぼれる。
 送り主の名は書かれていない。
 けれど莇は、だれがこの文を送ったのかわかった。

「こんなおれのことを、許してくださるのですか……鼓御前さま……っ!」

 たんぽぽは幸福の象徴。
 そして別の名を、鼓草(つづみそう)という。
 これで気づかないほうがおかしい。

「あぁ、鼓御前さま……鼓御前さま……!」

 声がふるえる。胸がふるえる。
 こころが、ふるえる。
 細胞のひとつひとつにいたるまで、莇は全身で歓喜した。
 どれだけ存在を否定されようと、ひとたび彼女に肯定されるだけで、生きる意味となる。

「もうすこしだけ、おそばにいてもいいですか……? あなたさまを想うことだけは、どうか……」

 文と栞を胸に抱き、莇はひとすじの涙を流す。
 たんぽぽの花。
 こぶりな黄色の花は、ちいさな太陽のよう。
 それは孤独なこころに、想い(はな)を咲かせた。