御刀さまと花婿たち

(……申し訳ありません、義父上)

 莇はうつむき、くちびるを噛みしめる。

(おれの存在は、御刀さまを傷つけます。こんな未熟者は、おそばにいないほうが……)

 無意識のうちに、莇は首に手をあてていた。
 ここに痣がある限り、じぶんを誇り高い人間などと思うことはできない。
 それは、これからも変わることはないのだろう。

 ……ひらり。

 ふいに、風がそよぐ。ゆれるカーテンが、莇の丸まった背をそっとなでた。

 ひらり、ひらり。

 うなだれた莇の視界に、淡い色彩の『なにか』が映りこんだ。
 折り鶴だ。薄桃色の千代紙で折られた鶴で、桜のもようが描かれている。
 莇は思わずまばたきをした。

 ひらり、ひらり。

 不思議なことに、薄桃色の折り鶴は軽やかに宙を舞い、莇のもとへやってくる。

「これはまさか……式神?」

 さそわれるように、莇は折り鶴へ手をのばす。
 指先にふれた刹那、淡い光が視界を埋めつくす。
 莇にふれた折り鶴は、やがて薄桃色の一筆箋へとすがたを変えた。
 やはり、式神だ。霊力者が連絡手段に使うものである。

「いったいだれが……」

 思わず身がまえる莇。そして次の瞬間、はっと息をのんだ。

『はやく おげんきに なりますように』

 枝垂(しだ)れ桜。
 雨風を除けて満開に咲く桜のもようの一筆箋に、たどたどしい筆文字で記されていた。
 ところどころ墨がにじんでいる。
 こどもが書いたような字だ。