白いシーツ、白い天井。
わずかに開けた窓のすきまから、ときおり春の陽気をまとった風が迷いこむ。
そのたびにゆれるカーテンさえも、真っ白だ。
白は無垢の象徴。
だからこそ、おのれが場違いな存在であることを突きつけられる。
「……おれは、なにをやっているんだろう」
ほかにだれもいない病室で、莇はつぶやく。
そこで、窓ガラスに映ったじぶんに気づく。
酷く情けない顔だ。
莇はたまらず、陽だまりから背を向けるようにしてベッドから足を投げだした。
──忌み子め。
──呪われた子。一族の恥さらし。
今回の件で、生家である神宮寺家の者たちになんと言われているのか。
そんなこと、いちいちきかずとも知れたことだった。
「鼓御前さまを、傷つけてしまうなんて……っ!」
御刀さまを守るべき家の者が、霊力を暴走させてしまったのだ。
莇自身が、いちばんにおのれを責めていた。
叶うことならば、いますぐにこの喉笛を引き裂き、死をもって侘びたいほどに。
けれど、それはできない。
──よく聞け。その首の痣は『しるし』だ。
莇がみっともなく逃げだすことを、彼は許してはくれなかった。
──これだけは忘れてくれるな。
──おまえが、鬼塚の末裔であることを。
鬼塚の血すじは、島の者たちから嫌われている。
それゆえ起源をおなじくする神宮寺家の傘下となり下がり、細々と暮らすようになったというのに。
(それなのに、どうして伯父上は……いや、義父上は、あんなにお強いのだろう)
莇はじぶんを息子として引き取ってくれた彼に、思いをはせる。
義父は鬼塚がみなから疎まれていても、それを恨むことはしなかった。
毅然とこうべを上げ、前を見据えていた。
そのひろい背を、いつだって莇は追いかけていた。
──義父上は、なにを教えてくださろうとしているのですか?
そう問いかけることは、もう叶わないけれど。
わずかに開けた窓のすきまから、ときおり春の陽気をまとった風が迷いこむ。
そのたびにゆれるカーテンさえも、真っ白だ。
白は無垢の象徴。
だからこそ、おのれが場違いな存在であることを突きつけられる。
「……おれは、なにをやっているんだろう」
ほかにだれもいない病室で、莇はつぶやく。
そこで、窓ガラスに映ったじぶんに気づく。
酷く情けない顔だ。
莇はたまらず、陽だまりから背を向けるようにしてベッドから足を投げだした。
──忌み子め。
──呪われた子。一族の恥さらし。
今回の件で、生家である神宮寺家の者たちになんと言われているのか。
そんなこと、いちいちきかずとも知れたことだった。
「鼓御前さまを、傷つけてしまうなんて……っ!」
御刀さまを守るべき家の者が、霊力を暴走させてしまったのだ。
莇自身が、いちばんにおのれを責めていた。
叶うことならば、いますぐにこの喉笛を引き裂き、死をもって侘びたいほどに。
けれど、それはできない。
──よく聞け。その首の痣は『しるし』だ。
莇がみっともなく逃げだすことを、彼は許してはくれなかった。
──これだけは忘れてくれるな。
──おまえが、鬼塚の末裔であることを。
鬼塚の血すじは、島の者たちから嫌われている。
それゆえ起源をおなじくする神宮寺家の傘下となり下がり、細々と暮らすようになったというのに。
(それなのに、どうして伯父上は……いや、義父上は、あんなにお強いのだろう)
莇はじぶんを息子として引き取ってくれた彼に、思いをはせる。
義父は鬼塚がみなから疎まれていても、それを恨むことはしなかった。
毅然とこうべを上げ、前を見据えていた。
そのひろい背を、いつだって莇は追いかけていた。
──義父上は、なにを教えてくださろうとしているのですか?
そう問いかけることは、もう叶わないけれど。



