「莇さんが取り乱してしまったのも、わたしの配慮がいたらなかったせいなのでしょう。人の心を、わたしはまだ理解できていない……」
鼓御前は、そっとおのれの胸に手をあてる。
息苦しい思いをしたけれど、自問した答えが、いまならわかる。
「この身は刀の付喪神なれど、人の身を得たからには、わたしも人の心を知りたいのです。だって、わたしの意思でふれることも、言葉を交わすこともできるんですもの。ただの鋼の塊には、できなかったことですわ」
ぎゅっと胸の前でこぶしをにぎりしめ、鼓御前は前を向く。
紫水晶のまなざしで、まっすぐに未来を見据えて。
「ですので、わたしもみなさまの一員として、学び舎で学ばせていただきたいのです。未熟者ゆえに、千菊さまや桐弥さま、葵葉……いろんな方の力をお借りすることがあると思いますが、みなさまに愛想をつかされないよう、わたしもがんばります! 一生懸命、人の心を学びます!」
「ふはっ、なんだそれ!」
こらえきれず、葵葉がふきだす。
桐弥は、おどろいたように目を丸くしている。
そして。
「ふふ……はははっ!」
千菊が笑い声をひびかせた。
いつもおだやかな笑みにとどまっていた彼が、高らかに。
「まいりましたね。私が望んでいることを、つづがあっさり叶えてしまいました」
「あれっ、もしかしてわたし、余計なことをしましたか!?」
「いいえ? むしろ望むところといいましょうか」
「えぇと……ご期待に添えられたなら、よかったです?」
しなやかな腕で、鼓御前を抱き寄せる千菊。
鼓御前としてはその行動の意味をいまいち理解できなかったが、「あるじさまがごきげんならきっと正解だったんだわ」と前向きにとらえることにした。
「つづはいいこですね」
「ちょっとあんた、姉さまにベタベタしすぎ」
「調子に乗るなよ、小僧ども」
千菊が鼓御前の頭をなでていると、すかさず葵葉が割り込み、桐弥が睨みをきかせる。
「ひとと刀は片時も離れず、寄り添うもの。まるで夫婦のように。──さながら御刀さまと、その花婿たちってところかしら?」
かたわらで、虎尾がくすりと笑みをこぼした。
これはそう──人に愛された刀が、人を愛する心を知る物語。
鼓御前は、そっとおのれの胸に手をあてる。
息苦しい思いをしたけれど、自問した答えが、いまならわかる。
「この身は刀の付喪神なれど、人の身を得たからには、わたしも人の心を知りたいのです。だって、わたしの意思でふれることも、言葉を交わすこともできるんですもの。ただの鋼の塊には、できなかったことですわ」
ぎゅっと胸の前でこぶしをにぎりしめ、鼓御前は前を向く。
紫水晶のまなざしで、まっすぐに未来を見据えて。
「ですので、わたしもみなさまの一員として、学び舎で学ばせていただきたいのです。未熟者ゆえに、千菊さまや桐弥さま、葵葉……いろんな方の力をお借りすることがあると思いますが、みなさまに愛想をつかされないよう、わたしもがんばります! 一生懸命、人の心を学びます!」
「ふはっ、なんだそれ!」
こらえきれず、葵葉がふきだす。
桐弥は、おどろいたように目を丸くしている。
そして。
「ふふ……はははっ!」
千菊が笑い声をひびかせた。
いつもおだやかな笑みにとどまっていた彼が、高らかに。
「まいりましたね。私が望んでいることを、つづがあっさり叶えてしまいました」
「あれっ、もしかしてわたし、余計なことをしましたか!?」
「いいえ? むしろ望むところといいましょうか」
「えぇと……ご期待に添えられたなら、よかったです?」
しなやかな腕で、鼓御前を抱き寄せる千菊。
鼓御前としてはその行動の意味をいまいち理解できなかったが、「あるじさまがごきげんならきっと正解だったんだわ」と前向きにとらえることにした。
「つづはいいこですね」
「ちょっとあんた、姉さまにベタベタしすぎ」
「調子に乗るなよ、小僧ども」
千菊が鼓御前の頭をなでていると、すかさず葵葉が割り込み、桐弥が睨みをきかせる。
「ひとと刀は片時も離れず、寄り添うもの。まるで夫婦のように。──さながら御刀さまと、その花婿たちってところかしら?」
かたわらで、虎尾がくすりと笑みをこぼした。
これはそう──人に愛された刀が、人を愛する心を知る物語。



