御刀さまと花婿たち

「神はうそをつかないわ。これでおじいさま方もおわかりでしょ? 御刀さまと彼らを引きはなすことが、どんなに無意味なことか」
「しかし……近年増加傾向にある〝(ヤスミ)〟に対抗できるのは、御刀さまのみ。そして御刀さまに霊力を供給する専属の覡を、早急にえらばねば……」
「あら、なにをかん違いしてんのよくそじじいども。えらぶのはアンタたちじゃないでしょうが」
「なっ……」

 情け容赦ない言葉を放った虎尾は、一変。
 ゆるりと口端を持ちあげてみせる。
 桐弥、千菊、そして葵葉へ、順に視線をやりながら。

「えらぶのは御刀さまよ。そこははき違えないでちょうだい」

 正論だった。
 もはや反論の余地はない。

「虎尾先生、ありがとうございます。説明の手間がはぶけました」
「説明っていうより、アタシは認識のズレをただしただけよ。あとはよきにはからってくださいな、立花センセ?」
「では、お言葉に甘えまして」

 虎尾の後押しを受け、千菊が居ずまいをただす。
 おかしい。
 竜頭面に覆われ表情が見えないはずなのに、冷ややかな笑みを向けられている気がする。
 三人の男たちは身震いをした。

「あのう、ひとつよろしいですか?」

 このタイミングで、おずおずと鼓御前が挙手をする。
 この場にいるだれもが、鼓御前へ集中した。

「はい、どうかしましたか? つづ」
「きけば専属の覡さまを、わたしがえらぶのだとか」
「えぇ。〝(ヤスミ)〟を滅するため、御刀さまに霊力を供給し、正しくふるう者が必要です。とくに私たち三名はきみとゆかりも深いので、お付きの覡候補としては最適ではないかと、みなさまにご提案をさしあげようと思っていたところなのですよ」

 提案という名の圧力だけどな、と思わなくもない葵葉だったが、素朴な鼓御前がそれを知るよしもなく。

「そうだったのですね!」

 納得したように鼓御前がうなずく。
 それから、こてりと首をかしげた。

「それでしたら、わたしからもおねがいがあるのですが」
「おねがい、ですか?」
「はい。莇さんの一件があって、ずっと考えていたのです。わたしはまだ未熟者であると」

 そのとき何気なく放った言葉が千菊をぴくりと身じろがせたことを、鼓御前は知らない。