御刀さまと花婿たち

「あなた方が縛ったのは、今世の私たちの名のみにすぎません。しかしこの身には、かつて御刀さまと生きた魂がやどっている」
「かの菅原道真(すがわらのみちざね)公が学問の神とあがめられているように、永く信仰されれば、人も神格を得る。御刀さまほどではないがな」
「つまりあなた方が人の子である限り、私たちをどうすることもできないということです。ご理解いただけましたか?」
「そんな、まさか……」

 千菊、桐弥に相次いでたたみかけられ、男たちはひるむ。
 しばしその様をながめていた千菊は、ぱんっと両手を打ち鳴らした。

「さて。誤解も無事とけたところで、みなさまにご相談があります」
「そ、相談……?」

 おうむ返しのごとく千菊へ問い返す声音は、打って変わって弱々しい。
 あまりの衝撃に理解が追いつかず、どう接すればよいのかはかりかねているようだ。
 そんな男たちをよそに、千菊は意気揚々と続ける。

「えぇ──あなた方が小僧風情とあなどっていた私たちと、私たちの愛しい御刀さまの今後について、です」

 ……ぞわり。
 背すじが凍るような感覚に、男たちはすくみあがる。

『蘭雪在るところ、竜の怒り在り』

 単なる言い伝えではない。
 目の前にいる竜頭面の男は、あまたの人々を恐れおののかせた伝説そのもので。

「──ちょっとごめんくださーいっ!」

 すぱぁん! と勢いよくふすまがひらいたのは、まさにふいの出来事だった。