御刀さまと花婿たち

「わたしが、行きます」
「鼓御前さま……」
「わたしが証言すれば、疑わしく思っている方も信じてくださるはず。ですから、わたしが行きます。いえ、行かねばならないのです」

 なにが正しいのか。どうすべきなのか。
 それが、いまはわかる。

「わたしを、あるじさまたちのもとへ連れていってください」

 鼓御前は背をしゃんと伸ばし、虎尾を見据える。
 ゆるぎない紫水晶のまなざしを受け、じっと耳をかたむけていた虎尾は、ふいに目もとをほころばせる。

「いいオンナじゃない。惚れ惚れしちゃうわ、つづちゃん」

 まるで、鼓御前がそう告げることを待ちわびていたかのような様子だった。

「そうと決まれば、急がなくちゃね」
「虎尾さま、もう『暮れの鐘』が鳴っています。あまり鼓御前さまを遅くにつれだすのは……」
「夜道は危険だものね、わかってるわ」 

 ひなが心配そうに声をかけるが、虎尾の返答は落ち着いたものだ。

「それじゃあつづちゃん、これを着ててくれる?」

 虎尾は座布団から腰をあげるなり、自身のジャケットを脱ぎ、鼓御前へ羽織らせた。
 その行動の意図を汲み取れず、鼓御前が「あのう?」と首をかしげると……

「アタシね、防御結界の使い手なの。縫製局でつくられた制服だとか覡用の装束は、アタシの霊力を糸のように何重にも織りなして仕立てたものだから、そのへんのあやかしじゃ傷ひとつつけられないわよ」

 と自信満々に補足してみせた。

「そうなのですか!? 花ちゃんおねぇさま、すごいです……!」
「んふふっ、そうよ、アタシはすごいのよ。そのアタシがついてるんだから、つづちゃんも安心してついてきてちょうだい?」

 虎尾は至極満足げに、鼓御前へ手をさしのべる。
 鼓御前も、その手を取ることにためらいはなかった。

「よろしくお願いします!」
「いいお返事! それじゃあサクッと殴り込みにいきましょうか!」
「な、殴り込み? 手荒なのはちょっと……」
「いきなり御刀さまがきたら、頭の硬いおじいさまたちもびっくりするわよねぇ。楽しみだわぁ」
「きゃっ、あのあのっ、花ちゃんおねぇさま!?」

 やけに楽しそうな虎尾に手を引かれ、鼓御前は縁側の沓脱石にそろえてあった草履を慌ててつっかける。
 濃紺色に更けゆく空。
 鈴蘭型のガス灯にあかりが灯る町並みへ、鼓御前は夜風とともに駆けだしていった。