御刀さまと花婿たち

「病院での騒動については、立花センセたちが解決してくれたわ。でもその代わり、面倒なことになってね」
「そのことについてなのですが、あるじさま、父さま、それに葵葉のすがたも見えません。みなさんご無事なのですか?」

 思わず問いかけて、鼓御前ははっとする。
 なぜか虎尾が、丸みをおびた瞳でこちらを凝視していたためだ。

「あの、わたし、なにか変なことでも言いましたか?」
「いえ、おどろいちゃって。まさかほんとうに立花センセたちが、かの有名な『鳴神将軍』だったり御刀さまの生まれ変わりだったとはねぇ」
「……はっ!」

 もしや、またぺらぺらと余計なことを口走ってしまったのだろうか。
 鼓御前がひやりとこめかみに汗を浮かべていると、ひなが言葉を継いだ。

「たしかに、蘭雪公が現代に転生するなど、にわかには信じがたいお話です。ですがそれはまぎれもない事実でありますと、私のほうから『典薬寮』に報告をいたしました」

 鼓御前の発言は失言でもなんでもない。
 ひなの言葉はそういった意味合いであった。
 しかし。

「さっきアタシも言ったでしょ? 『面倒なことになってる』って。具体的には『典薬寮』のおじいさまたちが、ひなちゃんの話を信じてないのよ。あの人たちにとって重要なのは、三人が『御刀さまの前で名乗った』ということだけ」

 それが意味することは、つまり。

「『御刀さまに真名を明かしてはならない』──その禁忌をおかした罪を問われて、三人は今夜、査問会議にかけられるわ」

 査問会議。
 それは間違ってもお茶を飲みながらおしゃべりをするような場ではないと、鼓御前は肌で感じ取った。

「誤解されたままだと……みなさんはどうなりますか?」
「永久的に覡の地位を剥奪されるわ。そして、この兎鞠島から追いだされる」
「なんということ……」

 鼓御前はくちびるを噛みしめる。
 無意識のうちに、ひざの上でこぶしをにぎりしめていた。

(葵葉が、あるじさまが、父さまがむかえにきてくださって、わたしはほんとうにうれしかった……)

 彼らの名をきき、その魂とふたたびつながることができて、心から歓喜したのだ。
 けれど、再会の喜びにひたっているままではいられない。