御刀さまと花婿たち

「で、ここまできいてたらわかると思うけど、立花センセがその立花家の出身。凄腕の手入れ師で有名なツンツン九条ちゃんが、九条家の出身ね」
「花ちゃんおねぇさまは、どちらの出身なのですか?」
「アタシ? アタシはそのへんの鞘師(さやし)の家系よ。現場に出るのはあんまり得意じゃないの」

 とはいえ、対〝(ヤスミ)〟用の武装神職者を養成する学び舎で、教鞭(きょうべん)をとる人物だ。
 虎尾自身もかなりの実力者なのだと、容易に想像はつく。

「それで、病院でパニックを起こしちゃった莇ちゃんのことなんだけど」

 そこまで言って、虎尾はとなりに控えたひなを見やった。
 鼓御前の世話役であるひなは、ふだんならば茶を用意して退室する。
 しかし今回は事情が事情であるため、同席している。
 虎尾のまなざしにうながされ、ひなが重い口をひらいた。

「私も莇も、御刀さまの奉納された兎鞠神社を管理する神宮寺家の出身でございます。ですが莇は『痣持ち』のため、分家である鬼塚家へ養子にだされたのです」
「……そういえば莇さんの首に、痣が見えました。あれが『痣持ち』ということですか?」
「はい。わが神宮寺家では数十年に一度、首に痣を持った男児が生まれます。その男児はきわめて高い霊力を持つがゆえに暴走させてしまう危険性もあり……一度本家を離れ、鬼塚家で制御法をまなぶならわしとなっております」
「そうだったのですね……」

 十五の少年らしからぬ生真面目な莇の言動を、鼓御前は思い返す。
 高すぎる霊力。
 まだ年若い身に余るそれを制御するため、莇はつねにおのれを厳しく律してきたのだろう。

 ──ずっと、ずっと、がんばって、きたんです……っ!

(病室で見せた涙……あれが、莇さんの心の叫びだったんだわ)

 鼓御前はそう理解するとともに、ズキリと胸が痛むのを感じる。

(わたしは……なにもしてさしあげられなかった)

 見舞ったのは、怪我をして心細いだろう莇を元気づけるためだ。
 それなのに、言葉の選択を間違ってしまった。

 じぶんとの会話の最中で、莇が取り乱したのだ。じぶんが原因であることはたしか。
 けれども、なにに対して莇が過剰に反応したのか、鼓御前はわからなかった。