御刀さまと花婿たち

「さぁさ、ひなちゃんも手伝ってちょうだい。パパッとすませちゃうわよ!」
「かしこまりました。鼓御前さま、失礼いたします」

 それからは、あっという間だった。
 ひなにより手早く寝間着を脱がされた鼓御前は、気づけば下着すがたになっていたのだ。

「あのう、これからなにをなさるんですか? お風呂に入るわけではない、ですよね?」

 おずおずと挙手をしながら鼓御前が問う。
「あらやだ」と口もとに手をあてた虎尾が言うには、こうだ。

「言ってなかったかしら? アタシ、ふだんは縫製局でお仕事をしててね。ひなちゃんから連絡をもらって駆けつけたの。制服の丈、合ってなかったでしょう?」
「制服……あっ、入学式のときに着せていただいた、せーらーふくのことですね!」
「そうそう。ウチの職員が手違いで納品しちゃったみたいでね。責任者として、ほんとうに申し訳ないですわ。──まったくあのバカども、御刀さまのことなんだと思ってやがんだ」
「えーと、花ちゃんおねぇさま……?」

 すらすらと受け答えていた虎尾が、突然低い声でなにやらつぶやいていた。
 その形相たるや、般若のごとし。
 あまりにも別人のようだったので、ひょっとしたら見間違いかもしれないわ、と鼓御前は結論づける。

「お詫びといってはなんですけれど、つづちゃんの制服は、アタシがちょっぱやでつくろい直しますわ。というわけで、ちょっと採寸させてくださいましね~」

 虎尾はふところから巻き尺を取りだすと、鼻歌をうたいながら鼓御前の肩まわりから採寸をはじめていく。 

「期待してて。とびっきり可愛いのを仕立ててあげるわ!」

 ぱちんっ。
 ウインクを寄こされた鼓御前は、あまりに(さま)になっている虎尾を前に、思わずうなずいてしまったのだった。