「つづ、莇さんは『霊力過剰症』といって、うまく霊力を制御できず、暴走させてしまっている状態です」
「そんな! どうすれば助けられますか!?」
「暴走の原因を遠ざけるのが、一番です」
「暴走の、原因……?」
くり返す鼓御前へ、返答はない。
千菊は無言でふみだす。
一歩、二歩と歩み寄り、莇の目前までやってくると、静かに手を伸ばす。
「う、ぅ……」
「『お眠りなさい』」
千菊の手のひらが、莇の視界を覆いかくした瞬間。
「あ……」
苦しみ悶えていた莇が、動きを止める。
千菊はかくりとくずれ落ちる莇を抱きとめると、そっとベッドへ横たえた。
「言霊で眠らせただけです。心配はいりません」
「莇さん……もう大丈夫、なんですよね?」
「えぇ」
「よかった……!」
千菊の言うとおり、莇は完全に意識を飛ばしているようだ。顔色はすこし白いままだが、苦悶の表情が消えていることに、鼓御前はひどく安堵した。
「──霊力値の急上昇が見られました! こちらです、先生!」
「どうかなさいましたか、覡さま!」
つかの間の静けさを、だれかの声と慌ただしい足音が引き裂く。
「えぇと、これは……?」
「ここは霊力者専門の病院なんです。莇さんの霊力値モニターの異常が見られたので、医療スタッフの方が駆けつけたようですね」
落ち着いた声音で鼓御前へ説明した千菊は、そのとなりの桐弥へ視線をうつす。
しばしぶつかり合う両者の視線。やがて、桐弥がため息まじりに鼓御前を支えていた手を離した。
「まったく……面倒なことを」
「ご協力、ありがとうございます」
千菊と桐弥のあいだで、どんな意思疎通が交わされたのか。
鼓御前が不思議に思っていると、千菊が今度は葵葉をふり返る。
「ちょっとややこしいことになったので、私と九条神使がさわぎをおさめます。きみはひと足さきに、つづを神社へつれ帰ってください」
それまで傍観していた葵葉は、千菊の言葉に首をかしげた。
「いいのか? 俺みたいな『下っ端』にそんなお役目まかせて」
「きみは彼女のためにならないことはしない。その点に関しては私も信頼しています」
「よく回る口だ」
「たのみましたよ、葵葉」
ダメ押しのような千菊の言葉に、葵葉は「……ふん」と鼻を鳴らす。
「そういうわけだ。行くぞ、姉さま」
「えっと……あのっ!?」
言うが早いか、鼓御前の腕をさらった葵葉が病室の窓に手をかける。
莇、それから千菊たちのことが気がかりな鼓御前ではあったが、現実はそう甘くない。
「そんじゃ、あとはよろしく」
にやりといたずらっぽい笑みを浮かべた葵葉は鼓御前を抱きあげると、開け放った窓の外へためらいなく飛び込んだ。
「そんな! どうすれば助けられますか!?」
「暴走の原因を遠ざけるのが、一番です」
「暴走の、原因……?」
くり返す鼓御前へ、返答はない。
千菊は無言でふみだす。
一歩、二歩と歩み寄り、莇の目前までやってくると、静かに手を伸ばす。
「う、ぅ……」
「『お眠りなさい』」
千菊の手のひらが、莇の視界を覆いかくした瞬間。
「あ……」
苦しみ悶えていた莇が、動きを止める。
千菊はかくりとくずれ落ちる莇を抱きとめると、そっとベッドへ横たえた。
「言霊で眠らせただけです。心配はいりません」
「莇さん……もう大丈夫、なんですよね?」
「えぇ」
「よかった……!」
千菊の言うとおり、莇は完全に意識を飛ばしているようだ。顔色はすこし白いままだが、苦悶の表情が消えていることに、鼓御前はひどく安堵した。
「──霊力値の急上昇が見られました! こちらです、先生!」
「どうかなさいましたか、覡さま!」
つかの間の静けさを、だれかの声と慌ただしい足音が引き裂く。
「えぇと、これは……?」
「ここは霊力者専門の病院なんです。莇さんの霊力値モニターの異常が見られたので、医療スタッフの方が駆けつけたようですね」
落ち着いた声音で鼓御前へ説明した千菊は、そのとなりの桐弥へ視線をうつす。
しばしぶつかり合う両者の視線。やがて、桐弥がため息まじりに鼓御前を支えていた手を離した。
「まったく……面倒なことを」
「ご協力、ありがとうございます」
千菊と桐弥のあいだで、どんな意思疎通が交わされたのか。
鼓御前が不思議に思っていると、千菊が今度は葵葉をふり返る。
「ちょっとややこしいことになったので、私と九条神使がさわぎをおさめます。きみはひと足さきに、つづを神社へつれ帰ってください」
それまで傍観していた葵葉は、千菊の言葉に首をかしげた。
「いいのか? 俺みたいな『下っ端』にそんなお役目まかせて」
「きみは彼女のためにならないことはしない。その点に関しては私も信頼しています」
「よく回る口だ」
「たのみましたよ、葵葉」
ダメ押しのような千菊の言葉に、葵葉は「……ふん」と鼻を鳴らす。
「そういうわけだ。行くぞ、姉さま」
「えっと……あのっ!?」
言うが早いか、鼓御前の腕をさらった葵葉が病室の窓に手をかける。
莇、それから千菊たちのことが気がかりな鼓御前ではあったが、現実はそう甘くない。
「そんじゃ、あとはよろしく」
にやりといたずらっぽい笑みを浮かべた葵葉は鼓御前を抱きあげると、開け放った窓の外へためらいなく飛び込んだ。



