御刀さまと花婿たち

「莇さん、思ってもいないことをおっしゃっては、なりません」
「どう、して……」
「とてもさびしそうな顔をしているように見えるからです」
「っ……!」

 思わずふりあおげば、どこまでも澄んだ紫水晶の瞳に見つめられている。
 莇はきゅっと、呼吸が苦しくなる。

「莇さんの瞳は、とてもきれいですね。まるで黒曜石のよう。きれいで、月のない夜のように、どこかさびしそう。わたしったら、そのことにいまごろ気づいたんです」

 するりとほほをなでた細い指先が、目じりに添えられ、にじんだ視界が清明になる。
 そこでようやく、莇は泣いていたことを自覚した。

 これは、いけない。
 曲がりなりにも神職者が、神の御前でなんたる醜態を。
 泣くな、泣くな泣くな泣くな──

「莇さん。さびしかったら、泣いてください」
「──ッ!!」

 やっとの思いでたもっていた最後の砦さえも、たったひと言でたやすく決壊してしまう。

「……ぅう、ああ……!」

 堪えなくてはいけないのに、意味のない母音しかつむげない。
 あふれた感情(もの)が、止まらない。

「ごめ、なさ……っ!」
「いいのです。だいじょうぶですからね、莇さん」

 鼓御前は嗚咽にふるえる背へ両腕をまわし、莇を抱きしめる。
 だいじょうぶ、だいじょうぶ……と声をかけ続ければ、少年の体重がなだれ込む。

「ずっと、ずっと、がんばって、きたんです……っ!」

 莇もまた、鼓御前をきつくきつく抱きしめていた。
 幼子のようにしがみつき、しゃくり上げていた。