御刀さまと花婿たち

「……御刀さまに、謝罪を申しあげねばなりませぬ」
「わたしに? どうしてですか?」
「〝(ヤスミ)〟を滅するお役目をまっとうしないばかりか、御刀さまのお手をわずらわせるなど……覡として、あるまじきことです」
「そんな。迷惑をかけられただなんて、わたしは思っていませんよ。ですから、お顔を上げてください」

 莇は答えない。
 ただ、かぶりをふるのみだ。
 哀愁をおびた横顔を前にして、鼓御前は、莇が『なにか大きなもの』を背負っていることに気づく。

「莇さん、入学試験で、莇さんがいちばんだったのでしょう? もっと誇ってもいいことだと思いますよ」
「……いちばんになっても、欲しいものが手に入らなければ、意味がない」
「欲しいもの……?」

 莇をはげますつもりでかけた言葉が、余計に莇の表情へ影を落としてしまう。

「えっと……その欲しいものというのはなにか、おききしても? それを手に入れるのに、わたしもお手伝いできますか?」
「っ……あなたが、それをおっしゃるのですか」

 そこまで言って、はっとしたように莇が口をつぐむ。
 それからふるえる息を吐きだしながら、つぶやくのだ。

「……申し訳ありません。お教えできません。それをつたえたら、わたくしはきっと、御刀さまを困らせてしまいます」

 すべての感情を押し殺したような、抑揚に乏しい声だった。

「取るに足りぬ人間のたわごとなど、お忘れください。なにとぞ……ご容赦ください」

 莇がそうしてこちらへ向き直り、両手をつこうとするので、鼓御前もたまらなくなった。

「なりません」

 はたと、莇は目を見ひらいた。
 深々と頭を垂れるよりさきに、ほほをつつみ込むものがあったからだ。