御刀さまと花婿たち

 つい先日〝慰(ヤスミ)〟との戦闘で負傷した莇は、十針を縫う重傷により、約二週間の入院を余儀なくされた。
 頭をやられたものの、後遺症などがなかったことが、不幸中の幸いか。

 お見舞いにきて早々ひと悶着あり、床にひたいをこすりつける莇をなんとか説得できたはいいものの。

(困ったわ……)

 ベッド横の椅子に腰かけた鼓御前は、とほうに暮れていた。
 寝ていなくてはいけないのに、莇がベッド上で正座の姿勢をくずさないためだ。
 怪我人だという自覚がないのだろうか。
 これでは、治るものも治らない。

(……そうだわ!)

 正面で向かい合っているから、緊張してしまうのだ。
 名案を思いついた鼓御前は、すぐさま椅子から腰をあげ、実行にうつす。

「莇さん、そちらへお邪魔してもいいですか?」
「こちらに……えっ?」
「よっと。わぁ、ふかふかですねぇ!」

 莇がなにを言われたのか理解しないうちに、そのとなりへ腰をおろす。

「今日はお天気もいいですし、このままお昼寝できそうです……ふわぁ」
「おっ……御刀さま!? なりません、このような場所で、男とふたりきりなど!」
「うふふ、冗談です」
「……え?」

 くすくすと、鼓御前が肩をふるわせている。
 莇はいよいよもって、わけがわからなくなった。

「眉間のしわ、とれましたね」

 とん。
 華奢な指先がふれ、莇は一瞬呼吸の仕方を忘れる。

「わたしもりらっくす? してるんですから、莇さんも、楽になさってくださいな」

 かざりけのないその言葉に、肩の力と胸のこわばりが、見る間にほどかれゆく。

「……かないませんね」

 莇はひとつ息を吐くと、両足をくずし、ベッドから投げだした。
 その視線は、すこし伏せがちだったろうか。