* * *
「これはまた、手酷くやられたものだ……」
「たいして実績のない若造を単独で現場へ向かわせるなど、早計だったのではないか」
「高い霊力をもつ『神童』といえど、所詮は人の子ということか」
莇が目を覚ましたときの気分は、はっきり言って最悪だった。
一から十まできかれているとも知らずに、コソコソと言いたい放題を。
包帯の巻かれた頭が訴える痛みより、胸にひろがる黒い感情が、なによりも不快だった。
「お荷物だな。実力もわきまえず、しゃしゃり出るからだ」
あのとき突き立てられた言葉の刃が、満身創痍のからだ、こころを、容赦なく切り刻む。
無力感に打ちひしがれる長い夜を、莇は独り、白いベッド上ですごした。
一夜明け、あるときのこと。
病室のドアがひかえめにひらかれる。
「こんにちは。お見舞いにきたのですが……」
「お帰りください」
意地を張っていた。
そう、腐りかけていたのだ。それは認める。
そうして投げやりな言葉を放ったすぐあとに後悔することを、莇は知らない。
「急にごめんなさい! ご迷惑でしたよね……うぅ」
鈴を転がしたような声音がきこえた。
──待て。
『典薬寮』の関係者に、じぶんをたずねてくるような年若い少女がいたか?
シーツにくるまり、窓際へそっぽを向いていた莇は、思考を一瞬停止させる。
そして次の瞬間、はね起きた。
「お花、こちらに置いておきますね。邪魔者は退散します。おだいじに……」
いまにも泣きそうに眉を下げた、艷やかな黒髪の少女は、間違いない。
「御刀さま!? これはとんだご無礼をっ!」
「きゃあ!? あ、莇さん! だめですよ、横になっていないと!」
ベッドからころげ落ちる勢いで土下座をくり出してきた莇に、顔面蒼白となって駆け寄る鼓御前であった。



