御刀さまと花婿たち


  *  *  *


 国立神梛(かんなぎ)高等専門学校。
 表向きにはつつましい神道系の学校を名乗っている。
 しかしてその実態は、対〝(ヤスミ)〟用の戦力、いわゆる武装神職者を養成する『典薬寮』直轄の極秘機関だ。
 言わずもがな、学生や教員をはじめとした関係者は、ことごとくが霊力者である。

 卯月のはじめ。
 例年どおり、厳しい入学試験をくぐり抜けた二十一名の新入生をむかえるはずだった。
 が、新入生のうち一名が欠席。
 ならびに急遽あらたに二名をむかえて異例の状況下で式を執り行う旨が、冒頭、学長による祝辞でのべられた。

「それでは、新入生代表にかわりまして、御刀さま──鼓御前さまに、お言葉を頂戴いたします」
「は、はい……!」

 神棚を祀ったステージ上。
 まだ慣れぬ人の足をおぼつかなく動かしながら、鼓御前はなんとか壇上へ向かう。

「えぇと、急なお話だったもので、あまり上手なことは申しあげられないのですが……」

『マイク』というものの前で話すと、声がやたらとひびきわたり、恥ずかしいことこの上ない。
 さらに視線という視線を一手に引き受け、気分はもう泣きそうだった。

「ふつつかな刀ではございますが、どうぞよろしくお願いいたしますね。〝(ヤスミ)〟をやっつけるために、いっしょにがんばりましょう。えい、えい、おー! ……なんちゃって」

 気恥ずかしさから、えへへ、とおどけてみせる鼓御前。
 花がほころんだかのごとき可憐な笑みに、一瞬の沈黙後。

「女子だ……しかも超かわいい御刀さまぁ!」
「俺たちのむさくるしい未来に光が!」
「御刀さま万歳! 鼓御前さまばんざぁあい!」

 すまし顔でパイプ椅子に腰を落ちつけていた新入生らが、いっせいに雄叫びをあげて歓喜する。

「はい、みなさん。もうじき式が終わりますので、ちょっとだけいいこにしましょうね?」

 が、ステージ横の教員席から、柔和な声音が奏でられ。

「あ、申し遅れました、一年生担任の立花です。本校はクラスも担任も持ち上がりですので、卒業までの五年間、よろしくお願いしますね?」

 発狂していた新入生は、いそいそとパイプ椅子へ座り直すなり、がっくり肩を落とした。
 なぜなら、物々しい竜頭の面をつけ、白衣に白袴と全身真っ白の装束を身にまとった男など、この世にはただひとりしか存在しないので。

「『鬼神(きしん)』が担任とか……終わったな、俺らの人生」
「ほんとそれな……」

 これは、上げるだけ上げて落とされた哀れな少年たちの、辞世の句である。