御刀さまと花婿たち

 淡い青空が澄みわたる朝。
 ひとしきりさえずった小鳥たちが、八重桜の枝で羽休めをしているころ。

「父さまぁ……」

 畳にへたり込んだ鼓御前は、潤んだ紫水晶の瞳で、障子をあけたかつての父を見上げた。
 居間をおとずれた桐弥はというと。
 その日はじめて目にした娘とそろいの紫の双眸を、険しく細める。

「なんだその格好は。丈が短すぎる」
「まったくでございます。すぐに『典薬寮』の縫製局(ほうせいきょく)へ苦情と、制服のつくろい直し要請を入れておきます」

 鼓御前が着ていたのは、白を基調とし、差し色に緋色を取り入れたセーラー服。
 一見して巫女装束を思わせる清純なデザインを装いながら、スカーフと同じ緋色のプリーツスカートは、ひざ上よりはるかに短い。
 いくらなんでも短すぎる。
 これでは見えてしまう。なにがとは言わないが。
 はりきって鼓御前の身支度を手伝っていたひなも、いまでは笑みという笑みを削ぎ落とし、桐弥に同意を示す。
 目は完全に据わっている。

「はしたないなまくら刀で、ごめんなさい……」
「おまえが謝ることじゃない」

 殺気立つ桐弥とひなに畏縮してしまったのか。
 鼓御前のうなだれた頭を、ひとつ嘆息した桐弥がなでる。
 ひなが用意した黒タイツのおかげでギリギリ許せるが、あれがなければ、鼓御前を外にも出さなかっただろう。
 どこの馬の骨とも知れん野郎どもに、かわいい娘の素足を見せる義理など存在しないからだ。

「おまえは僕が打った最高の刀だ。必要以上にじぶんを卑下するな。低俗な人間どものことなど顎で使う心づもりでいろ」
「えっ? それはさすがに……」
「いいな、天」
「は、はい、父さま!」

 真顔の桐弥に押し切られてしまった。
 反射的に返事をした鼓御前は、このときになってやっと気づくことがある。

「あのう、父さまも見慣れない『着物』をお召しになっていますが、今日はなにかお祝い事でもあるのでしょうか?」

 鼓御前のいう『着物』とは、桐弥が身にまとった学ランのことだ。
 紺青生地の肩まわりがぱっくり割れており、下に着たワイシャツがのぞく。
 そのさまは、神社の者が祭事などで正装として身にまとう狩衣(かりぎぬ)の意匠を彷彿とさせる。

「えぇ、もちろん。本日は鼓御前さまの晴れ舞台でございますからね!」
「わたし?」

 高らかに声をあげるひなを前に、鼓御前が首をかしげたことは、言うまでもない。