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木々が色づく季節。
黄昏へと向かいゆく兎鞠神社の石段に、橙の灯明がともる。
風の強い曇天のもと。
ごろごろと空がうなりはじめる。
風が吹きすさぶ境内に、苧環は立っていた。
「これより選定の儀、神前式を執り行います」
苧環の宣言とともに、笙の音が舞いあがる。
風のわななくような雅楽の音が、竜の咆哮のごとき雷鳴にかさなる。
やがて祝詞の奏上が終わり、鼓御前はゆっくりとまぶたを押し上げた。
静かな心境で、目前にある真白な綿帽子をかぞえる。ひぃ、ふぅ、みぃ、よ……と。
「それでは御刀さま──鼓御前さま」
苧環に促され、鼓御前は朱の盃をあおる。
ひとと神。
本来交わることのない彼らが、この日、えにしをむすぶ。
けっして離れることなく、ともにあることを、永遠に誓って。
その花婿は、白無垢の胸もとに葵の花の刺繍。
その花婿は、白無垢の胸もとに菊の花の刺繍。
その花婿は、白無垢の胸もとに桐の花の刺繍。
その花婿は、白無垢の胸もとに莇の花の刺繍。
ひとと刀は片時も離れず、寄り添うもの。
まるで夫婦のように。
「ふつつかな刀ではありますが、これからもよろしくお願いいたしますね」
花婿たちへ向かって、鼓御前はほほ笑む。
荒れ狂う風はいつしか凪ぎ、ねずみ色の雲間から茜の光が射し込む。
恥じらうように染まった紅葉が、ひらひらと、宙を舞った。



