御刀さまと花婿たち

「おれが……鼓御前さまの、覡に……?」
「あっ、もちろん莇さんがお嫌でしたら、断っていただいてもけっこうですからね?」
「そんなことっ……!」

 ない。あるはずがない。
 たったひとり。彼女だけを求めて生きてきたのだから。けれど。

「……おれで、いいんですか」
「莇さん?」
「ほかのお三方のように、おれ自身は鼓御前さまとは縁もゆかりもございません。おれには、過ぎたお役目なのでは……」
「縁もゆかりもない? どの口が言ってんだか」

 ため息まじりの葵葉の言葉が、莇の頭上にふり注ぐ。

「莇さん、お顔を上げてください」

 うつむく莇の肩に、そっと華奢な手がふれる。
 莇はしばしためらったのち、こわごわと視線を上げる。
 そして、はっとした。
 鼓御前が、やさしいまなざしでこちらを見つめていたのだ。
 いや、鼓御前だけではない。
 葵葉も、千菊も、桐弥も、虎尾も、みな莇を見つめていた。

「ここにいるみなさんが、同じ時代に生きていること。これは運命なんです。だれかひとりでも欠けてはいけなかった」

 みながこころを通わせ、力を合わせたからこそ、奇跡を起こすことができたのだ。

「ともに闘い、確信しました。葵葉、あるじさま、父さま、莇さん。わたしにはみなさんの力が必要です。刀として、みなさんの手でふるわれたいのです」

「ですから」と言葉を区切った鼓御前は、ふいにはにかむ。

「わたしはみなさん全員を選びます。よくばりかもしれませんが、ごめんなさいね。神というものは、もともとよくばりなのです」

 そうだ。神のなすことは、すべてが(ただしい)

「……鼓御前、さま」
「莇さん。よろしければ、わたしの手を取っていただけますか?」
「……っ!」

 どうして拒否などできようか。 
 莇はさしだされた手を取る。
 ちいさな手だ。そのやわらかな感触は、夢ではない。

「夢じゃ、ないんだ……」

 噛みしめるようにつぶやいたなら、莇はもう、我慢できなくなった。
 まなじりからあふれる熱を、こらえられない。

「胸を張って、あなたのとなりにいられる……おれの意思で、あなたにふれてもいいんですね……鼓御前さまっ!」

 こみ上げる感情のまま、莇は鼓御前を抱きすくめる。

「ふふ。お好きなだけふれてくださいな。わたし、ぎゅってされるの大好きなんです」

 細い腕が、背中にまわる。

「──暁矢(きょうや)さんは、もっと甘えてもいいと思いますよ」

 内緒話をするようにささやかれたら、もう。
 しあわせすぎてどうにかなってしまうと、莇は思った。