御刀さまと花婿たち


  *  *  *


 いったいどういうことだ。
 わけがわからない。
 ひなに腕を引かれるまま、莇は神社の大広間へ通される。
 そこで、信じられない光景を目にした。

「そっちはだめです、あーっ! 莇さんいいところに! つかまえてくださーいっ!」
「え……」

 障子を開けるやいなや、鼓御前の悲鳴がひびきわたった。
 それから、なにやらガサガサと俊敏な動きをするものが、こちらへ突進してくることに気づき。

「こう、ですか!?」

 莇はとっさにかがみ込み、『それ』を両手でつかむ。

「さすが莇さんです! うわーん、よかったですー!」
「えぇっと……」

 安堵から号泣している鼓御前。
 よくわからない莇は、両手で捕獲した『それ』に視線を落とす。

「…………亀?」

 甲羅の色は黒。手のひらよりすこし大きいサイズだ。
 一見して亀に見えるが、それはただの亀ではなかった。
 なぜなら、にょろにょろと動く蛇のしっぽを持っていたのである。

玄武(げんぶ)玄丸(くろまる)ちゃんです!」
「玄武……といいますと、四神(しじん)の?」
「はい。厳密には四神を模して、わたしの神気から生みだした眷属なのですが、お札から逃げだしてしまって……」

 涙目の鼓御前が、うしろをふり返る。

「おい、いいこにしろよ……いって!」
「シャー!」

 あるところでは、縞もようの白猫に、葵葉が手の甲を引っ掻かれており。

「コケーッ! コケーッ!」
「やかましい! この鳥畜生!」

 あるところでは、にわとりのようにけたたましく鳴く赤い孔雀が、桐弥に叱りつけられており。

「にぎやかですねぇ」

 あるところでは、ほほ笑みを浮かべた千菊のまわりを、青い竜のようなもの(さほど大きくはない)がふよふよと飛んでおり。

「これぞまさしく、カオスってやつね」
「と、虎尾(とらお)先生! いらしたのですか!?」

 しまいにはどこからか現れた虎尾に、莇は度肝を抜かれる。

「当然よ。つづちゃんに結界の張り方を教えたのは、アタシだもの」
「結界……ですか?」
「まぁとにかく、お座りなさいな。あ、亀ちゃんは逃げないように、そこにひっくり返しておいて」

 どうしよう、なにひとつ理解できないのだが。
 莇は人知れず、泣きたくなった。