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朱の鳥居の前で、莇はじっと神社の奥を見つめていた。
「……未練がましいな」
ははっと、乾いた笑いがもれる。
御刀さまのお付きの覡を選ぶ選定の儀が、ついに執り行われるらしい。
こうした神事は神宮寺家がになうため、近ごろは苧環が忙しそうにしている。
今日は三名の候補者がそろって呼びだされたと聞いて、気づいたら、莇は神社をおとずれていた。
「おれは、葵葉の付き添いでやってきただけ」
だれにでもなく、言い訳をする。
お付きの覡として、最有力候補は千菊だ。
だが、桐弥は『奉納祭』での神楽の功績があり、近々九条家当主へ就任する。
葵葉も覡としては経験が浅いが、『鬼』を滅するために一役買った。
だれが選ばれたとしても、おかしくはない。
(もし葵葉が選ばれたら……おれは、ちゃんと祝福をしてやれるだろうか)
莇は、腰帯に差した短刀──此葉にふれる。
葵葉に『返した』つもりだったが、あの一件後、ふたたび莇のもとへもどってきた。
「おまえが持ってろ。だいじにしろよな」と、葵葉に手渡されて。
葵葉はじぶんを信頼してくれている。
莇だって、葵葉のことを信頼している。
親友だと、思っている。
だからこそ、こころから友を祝福できないじぶんが、嫌になって仕方ない。
「たとえ、お付きの覡になれなくても……」
莇はぐっと頬肉を噛み、言葉を飲み込む。
こみ上げる想いには、ふたをしてしまおう。
大丈夫だ。辛抱することは、得意なのだから。
「……莇!」
鳥居に背を向け、歩きだしたときだった。
呼び声があり、莇はふり返る。
見れば、ひなが息を切らして駆け寄ってくるところだった。
「姉上? どうされたのですか」
「こんなところにいたのね。さがしましたよ!」
「はい?」
「もう、聞いてないの?」
ひなは焦れた様子で、莇の袖を引く。
「さぁ早く。鼓御前さまがあなたをお呼びよ!」
「…………えっ」



