御刀さまと花婿たち

「どういうことだ……そいつが、ととさま……? 姉さまは、なにを言って……」

 いまだ状況をつかめず、困惑する葵葉。
 答えたのは、嗚咽をもらす鼓御前の肩に手を添えた、くだんの少年だ。

三条小鍛冶宗近(さんじょうこかじむねちか)──三条派が開祖を師とあおぎ、山城伝(やましろでん)の流れをくむ無名の刀鍛冶、九条紫榮(くじょうしえい)
「は……?」
「おまえたちが鼓御前と呼ぶ刀を打った刀工の名だ。そして僕の前世の名でもある」
「おい……冗談はやめろ」
「冗談なもんか。耳をよくかっぽじってきくことだな」

 鼓御前の肩を引き寄せた少年は、その胸に少女をもたれさせるや、凛然と告げる。

「今世の名は九条桐弥(くじょうきりや)。僕の(むすめ)を汚すやつは、人だろうがあやかしだろうが容赦はしない」

 研ぎ澄まされた刃は、ふれるだけで斬れる。
 葵葉は鋭利な紫水晶のまなざしに圧倒されたおのれを自覚し、ぎりりとくちびるを噛む。

「ごめんください──おや? みなさんおそろいで」

 若い男の声がひびいたのは、そんなときである。

 はじかれたようにふり返る葵葉。
 眉根を寄せる少年──桐弥。
 そして桐弥に抱かれながらもなんとかふり向き、紫水晶の瞳に丸みをおびさせる鼓御前。

 夕焼けに濡れる縁側。
 そこへ、純白の衣をまとい、物々しい竜頭の面をつけた男がすがたをあらわす。

「ちょうどよかった。お知らせしたいこともありますし、仲良くおしゃべりでもいかがですか?」

 おっとりとした声音は、ぴんと張り詰めた空気にあまりにも不釣り合いだ。
 しかし鼓御前の胸は、これまでになく高鳴っていた。