御刀さまと花婿たち

「思いだして……」

 まだだ。ほかにも『鍵』があるはずだ。
 鼓御前だけではない。
 ほかにも、だれかが謎を解く『鍵』を……

「……そうだわ」

 はたと、ひなは思いだす。
 鼓御前がさらわれた日。
 早朝に莇がたずねてきたのだと、あとから虎尾に聞いた。
 そのとき、気になることを話していた。
「莇ちゃん、首を隠していなかったのよね」と。

「鼓御前さまに『祠』の存在を教えたのは、莇……あの子は、『すべて』を知った」

 そのうえで首をさらけだしていたとするなら。
 その行動には、大きな意味がある。

「……あぁ……そうだったのね。莇、あなたは……っ!」

 ばさりと萌黄の袖を払い、ひなが身を乗りだす。

「っ、おい!」

 バチィイイッ!

 葵葉が制止する間もなく、再度のばされたひなの手がはじかれる。
 それでも。

「私がいったい何百、何千もの本を読みあさってきたと思うんですか……この私に、読みとけない物語はありませんっ!」

 ひなは、手をのばすことをやめない。

「血の盟約をもって命ず。わが真名のもとに、真実を示せ」

 ぱたた。右手首から血をしたたらせながら、ひなは声を張りあげる。

「わが名は──鬼塚美弦(おにづかみつる)!」

 ──リィン。

 ひなの声に共鳴するかのごとく、固く閉ざされていた書物がひらく。

 ぱらぱらぱら──……

 ひなの手のひらに舞いおり、ひとりでにめくれる(ページ)
 書物を手にしたひなは、驚愕の表情のままで。

「おい、大丈夫か……!」

 ひなの肩にふれた刹那、葵葉を異変が襲う。

「うぁっ!?」

 バチバチッと、白くはじける視界。
 葵葉に記憶が流れ込む。
 それは──忘れられていた記憶。