御刀さまと花婿たち

「どうした?」
「はっ……はっ……!」

 薄青色のストール越しに、莇は首もとを押さえる。
 ぎりぎりと締めつけるような痛みと苦しさ。
 それだけではなく、ズキズキと脳のきしむような頭痛にみまわれ、めまいをもよおす。

(痣が、疼く……っ!)

 それは、いまだかつて経験したことのない感覚だった。

「おい、大丈夫か」
「はぁっ! くっ…………ふぅう……」

 葵葉に背を支えられる感触がある。
 莇はゆっくりと深い呼吸をくり返す。
 体内で乱れた霊力の波が、やがて凪ぐ。

「は…………すまない、もう大丈夫だ」
「ひさびさだな。家にもどるのは後にして、念のため虎尾センセに診てもらったほうがいいんじゃないか?」

 葵葉の言葉に、莇は視線を伏せる。
 以前の莇ならば、「平気だ」とあしらっていただろう。
 けれど、いまはちがう。
 案じてくれる葵葉の気持ちを考えれば、やせ我慢などしている場合ではなかった。

「そう……だな」
「そんじゃ、ひとまず虎尾センセのとこに……ってそういやおまえ、虎尾センセがいまどこでなにしてんのか、知ってたっけ?」
「……?」

 なにやら葵葉が、よくわからないことを問いかけてくる。
 莇が首をかしげると、「あーはいはい、理解した」と納得したらしく。
 なにを言いたいのだろう。

「まぁ、この状況だから仕方ないよな。そういうわけで九条家に行くぞ」
「……わかった」

 釈然としないものの、理由ならいずれわかることだ。
 莇はおとなしく葵葉の提案を受け入れることにした。

 ひらり……

 兎鞠神社をあとにした少年たちのもとへ、ふいに折り鶴が飛んでくる。連絡用の式神だ。

「どこからだ?」
金色(こんじき)の折り鶴……待て、あれは!」

 莇が血相を変える。
 金色の折り鶴は、『典薬寮』が関係者へいっせいに情報を周知するさいに使われる。
 そのほとんどが、緊急事態時におけるもので。
 莇が伸ばした指先にふれ、折り鶴は一通の書面へすがたを変える。
 そこには、こう記されていた。


 各員へ告ぐ。
 一級神使、虎尾。
 一昨日(いっさくじつ)より所在不明。
 速やかに捜索、および捕縛せよ。
 背信の疑いあり。