御刀さまと花婿たち

「この状況下で私たちがすべきことは、みっつあります」

 千菊はそういうと、まず人さし指を立ててみせる。

「ひとつ、御刀さま周辺の警護を、強化すること。ふたつ、島民へ被害が出る前に、早急に〝(ヤスミ)〟を発見すること。そしてみっつ──『奉納祭』における神楽の実施の可否を、適切に判断することです」
「立花殿……先祖代々続く『奉納祭』を実施しないという選択肢はないはず。よもや、取りやめるべきとおっしゃいなさるか!」
「いいえ。神楽を途絶えさせたとなれば、それこそ悪しきあやかしたちが島にあふれ返ってしまうでしょうね」
「なれば何故……!」
「もちろん最善策は、いま挙げましたすべての事柄を完璧に成し遂げることです。ですので、そのために必要な『役割分担』をしましょうとご提案させていただきたいのです」

 はっと気づいたように、竜胆は口をつぐむ。
 落ち着き払った声音で、千菊は続ける。

「島の巡回および〝(ヤスミ)〟の捜索は、わが立花家がおこないましょう」
「鬼塚家も協力いたします。本日午後にでも、兎鞠神社へ現場検証班の派遣を。瘴気の痕跡をつかむことさえできれば、すがたを消した〝(ヤスミ)〟の手がかりとなるはず」
「決まりですね。では──」

 千菊、莇がたがいに顔を見合わせ、うなずき合う。

「御刀さまの警護は、九条家がおこなう」

 そのときだ。
 湖に面した縁側から、桐弥が颯爽とすがたを現す。
 桐弥は陣を引き連れていた。

「いましがた、うちの結界師が島全域に感知式の結界を張り終えたところだ。〝(ヤスミ)〟が不審な動きを見せれば、こちらもすぐにわかる」
「結界師……というと、陣さまが? それも、この広い島全域に結界を……?」

 にわかには信じがたい。
 けれども桐弥のうしろに控えている陣は涼しげな面持ちのまま、鼓御前らへ向かってうやうやしく一礼するのみ。
 おどろきを隠せない鼓御前へ、桐弥はつと向き直り。

「御刀さまはこちらへ。──話をしよう」

 簡潔な言葉。
 いつもの桐弥であれば淡々と告げたのち、さっさと背を向けてしまうところだ。
 だが、このときはちがった。
 鼓御前へ右手をさしのべ、その反応をじっと待っている。
 どうかこの手を取ってくれと、すがるようなまなざしで。

「わかりました、父さま」

 もう迷いはなかった。
 鼓御前は桐弥の手を取り、その場を後にした。