「姉さまのために言っておくぜ。おまえ、最近付き合い悪い」
「は……?」
「気づいてないだろ。姉さまが心配してるのに、そっけなくあしらってるの」
「……そんなことは」
「ある」
有無を言わさぬ声音だった。
「俺がこうもナイスタイミングで居合わせた理由、教えてやろうか」
口ごもる莇へ、葵葉はさらに畳みかける。
「姉さまにたのまれたんだよ、おまえのこと、気にかけてやってくれってな」
「……鼓御前さまが?」
おどろいた莇は、思わず鼓御前へ視線をもどす。こくりと、ちいさなうなずきがあった。
「……わたしが相手だと、莇さんは、気を遣ってしまうようなので」
顔合わせ後。
緊張した様子の莇の力になれなかったことを、鼓御前はずっと悔やんでいた。
だから屋敷内で偶然葵葉と遭遇したとき、ひそかにたのんでいたのだ。
どうか、莇の力になってくれないかと。
「昨日もさっさといなくなったから、ここぞとばかりに言わせてもらうけど。──おまえさ、じぶんさえがんばればどうにかできるとでも思ってんの?」
葵葉の言葉は厳しいものだ。
それもそうだろう。
「俺たちは人間だ。それも生まれてまだ十六年そこらのガキ。できないことのほうが多い。それでもやってこれたのは、立花センセとかまわりの人たちがいたからだろ。ちがうか?」
葵葉は孤独にさいなまれ、必要とされることのたいせつさを痛感した。
だからこそ、無自覚に救いの手をふり払う莇の言動が許せないのだ。
「死ぬほどきつい特訓も、いっしょにやってきたろ。なんで急に独りで突っ走ろうとするんだよ」
「おれは……」
「取り残される側の気持ちは、おまえがよくわかってんじゃないのかよ!」
「……っ!」
なにひとつ、莇は反論できなかった。
「あぁ……おれは、たいせつなひとたちにまで、同じ思いをさせるところだったのか……」
うなだれる莇。口からこぼれた声は、弱々しくふるえていた。
「申し訳ありません、鼓御前さま……すまなかった、葵葉……」
莇は床に両手をつき、深々と頭を垂れる。
つられてこみ上げるものがあったが、鼓御前は目頭ににじむ熱いものをぐっとこらえる。
そして、莇の肩へそっとふれた。
「わたしも莇さんのお力になりたい。頼ってほしい。それをつたえたかっただけなんです。独りで背負い込まず、つらいことは教えてほしいです」
「……はい、鼓御前さま」
たったひと言。
けれどその言葉を聞くことができただけで、鼓御前の胸は熱をもつ。
(わたしの気持ち、ちゃんとつたえられたわ……よかった)
胸の奥にひろがっていたわだかまりが、ほぐれた気がした。
「は……?」
「気づいてないだろ。姉さまが心配してるのに、そっけなくあしらってるの」
「……そんなことは」
「ある」
有無を言わさぬ声音だった。
「俺がこうもナイスタイミングで居合わせた理由、教えてやろうか」
口ごもる莇へ、葵葉はさらに畳みかける。
「姉さまにたのまれたんだよ、おまえのこと、気にかけてやってくれってな」
「……鼓御前さまが?」
おどろいた莇は、思わず鼓御前へ視線をもどす。こくりと、ちいさなうなずきがあった。
「……わたしが相手だと、莇さんは、気を遣ってしまうようなので」
顔合わせ後。
緊張した様子の莇の力になれなかったことを、鼓御前はずっと悔やんでいた。
だから屋敷内で偶然葵葉と遭遇したとき、ひそかにたのんでいたのだ。
どうか、莇の力になってくれないかと。
「昨日もさっさといなくなったから、ここぞとばかりに言わせてもらうけど。──おまえさ、じぶんさえがんばればどうにかできるとでも思ってんの?」
葵葉の言葉は厳しいものだ。
それもそうだろう。
「俺たちは人間だ。それも生まれてまだ十六年そこらのガキ。できないことのほうが多い。それでもやってこれたのは、立花センセとかまわりの人たちがいたからだろ。ちがうか?」
葵葉は孤独にさいなまれ、必要とされることのたいせつさを痛感した。
だからこそ、無自覚に救いの手をふり払う莇の言動が許せないのだ。
「死ぬほどきつい特訓も、いっしょにやってきたろ。なんで急に独りで突っ走ろうとするんだよ」
「おれは……」
「取り残される側の気持ちは、おまえがよくわかってんじゃないのかよ!」
「……っ!」
なにひとつ、莇は反論できなかった。
「あぁ……おれは、たいせつなひとたちにまで、同じ思いをさせるところだったのか……」
うなだれる莇。口からこぼれた声は、弱々しくふるえていた。
「申し訳ありません、鼓御前さま……すまなかった、葵葉……」
莇は床に両手をつき、深々と頭を垂れる。
つられてこみ上げるものがあったが、鼓御前は目頭ににじむ熱いものをぐっとこらえる。
そして、莇の肩へそっとふれた。
「わたしも莇さんのお力になりたい。頼ってほしい。それをつたえたかっただけなんです。独りで背負い込まず、つらいことは教えてほしいです」
「……はい、鼓御前さま」
たったひと言。
けれどその言葉を聞くことができただけで、鼓御前の胸は熱をもつ。
(わたしの気持ち、ちゃんとつたえられたわ……よかった)
胸の奥にひろがっていたわだかまりが、ほぐれた気がした。



