御刀さまと花婿たち

「莇さん、ごめんなさい、わたし……っ」

 なにも知らなかった。ほんとうに無知だった。
 このまま悠長にすごして『奉納祭』を迎えていたらと考えると、鼓御前はふるえが止まらなくなった。

「だれかがやらねばならないことです。鼓御前さまがお気に病まれることはありません」
「そんなこと……っ!」

 できない。できるはずもない。

(だってわたしは、もうただの刀ではないのに……!)

 ひとびとと言葉を交わし、こころを通わせることができるのに。
 彼らが儚い命を散らすさまを、黙って見ていることしかできないというのか。

「だめです、莇さん……こんなのは、だめ……」
「……鼓御前さま?」
「こんなこと、間違っています……!」

 とうとう、鼓御前はその場にくずれ落ちてしまった。

「鼓御前さま、お気をたしかに」
「無理です、こんなこと……うっ、ふぅう……!」

 すぐに莇が駆け寄り、背を支えてくれるが、それも逆効果だ。

「なんで……なんでみなさん、無茶をするんですかぁ~!」
「つ、鼓御前さま!」

 しまいには、わっと泣きだす鼓御前。
 反射的に抱きとめた莇なのだが、これには動揺を隠せない。

「あーあ、姉さま泣かせたー」
「…………葵葉!?」

 とほうに暮れた莇の前に、柱の影からひょいと葵葉が顔を見せる。

「なんでここに……」
「立花センセの付き添いで来たって言ったろ。そりゃいるだろ」

 そうだった、と莇は頭をかかえたくなる。
 顔合わせに葵葉は出席していないが、その後の夕食の席で見かけたのだった。
 九条家で一晩をすごすことになり、夕食後、莇はすぐに部屋へもどった。
 そのため、ひと言ふた言しか会話していないが。

「優等生クンも、ここまで来ると重症だな。虎尾センセじゃないけどさ、ちょっとはグレたほうがいいかもな」
「どういう意味だ?」
「いや見たらわかるだろ。鈍感か?」

 葵葉は呆れたように肩をすくめ、莇にしがみついた鼓御前を指さす。

「あざみさ…………ふぇえ」

 依然として、ぐすぐすと鼓御前が泣きじゃくっていた。
 嗚咽のせいで、しゃべることもままならないようだ。