* * *
〝慰〟の消滅を確認。
任務に当たった覡一名が重傷。
医療班および手入れ師は、ただちに急行せよ。
その一報は、『典薬寮』の覡たちを震撼させた。
「手入れ師だって? 御刀さまになにがあったのか! ご容態は!?」
「確認中でございます! 医療班のみなさまは兎鞠郵便局へ。手入れ師はこれより緊急招集を……」
「──必要ない」
若者が慌ただしく行き交う広間にて。
ひびきわたったひと言が、居合わせた覡たちに呼吸の方法を失念させた。
「僕が行く」
ほとんどの若者が、白衣に浅葱の差袴すがた。
そのなかで鞄を片手に颯爽と闊歩する少年は、異様であった。
少年の差袴は今紫。
藤の白紋がほどこされている。
「余計な人員を寄こしてみろ──殺すぞ」
爛爛とぎらつく紫水晶の瞳。
神職者とはとうてい思えぬ、鬼の形相だ。
だれもが息を飲み、阿修羅のごとき少年の背が消えゆくのを見守った。
「……『沈黙の九条』が、みずから声を上げるとは」
にわかには信じがたいけれども、事実として認めるほかない。
少年──九条を超える手入れ師が、そうそういるはずがないことも。


