御刀さまと花婿たち

 ──その夜。
 鼓御前は夢を見ていた。

 たよりなくゆれる燭台の火。
 薄暗い山小屋で、男がひとり、床に伏せていた。

『けほっ、けほっ……!』

 男はやせ細り、肌は病的な青白さ。
 激しい咳をくり返し、懸命に呼吸をするあいまにも、のどがひゅうひゅうと嫌な音を立てる。

『てん、こ……』

 男は力をふりしぼり、かたわらに横たわっていたものへ手を伸ばす。
 それは、ひと振りの太刀だった。

『天鼓丸……』

 男は床のなかで、太刀をかき抱く。

『……ここには、僕と、おまえだけ』

 男の声はか細かった。
 げほごほっと咳が止まらない。
 太刀を抱いた腕も、小刻みにふるえている。
 限界が、近づいているのだ。

『大丈夫だ……ともに、土に還ろう』

 だれにも、邪魔をされずに。
 そのつぶやきを最後に、沈黙する男。
 そうして男は、だれも知らぬ場所で独り、事切れる。
 動くもののない山小屋で、ゆらめく燭台の火が、ふっ……とかき消えた。