御刀さまと花婿たち

 顔合わせが終わるころ。
『映月亭』へ陣がやってきた。
 それを桐弥はちらと一瞥する。

「御刀さまを部屋まで案内しろ」
「かしこまりました、若さま」

 陣と桐弥のあいだで、簡潔な言葉が交わされる。

(なんだか、不思議な感じ……)

 学校では軽口を叩きあうふたりを見ているせいか、その光景が鼓御前には物珍しく思えてしまった。
 それから、陣の案内で母屋へ向かっていたときのこと。
 道中、やたら見おぼえのある少年とばったり遭遇する。

「あんた、虎尾センセじゃないか?」

 にこり。

「虎尾センセだよな?」

 にこーっ!

「なんでなにも言わないのこのひと! 怖いんだけどっ!」
「えぇっと、これはその。かくかくしかじかでして」

 陣を目にして混乱する少年、葵葉へ、慌てて説明をはじめる鼓御前であった。