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「漆黒の地鉄に、屈折した細い金筋の紋様……稲妻の、刃文……」
莇は朦朧とした意識のなか、突如あらわれた漆黒の刀を目に焼きつける。
「まさか……御刀さまと、鼓御前さまと契りを結んだというのですか、青葉時雨さま!」
「うるさい。外野はおとなしくくたばってろ」
「……うっ!」
頭から血を流しすぎた。
ろくに脳へ血流の行き届いていない莇は、叫んだ反動による強烈な頭痛で、意識を飛ばした。
『莇さんの手当てをしなければ。あまり時間はかけられません』
「わかってるって」
鋼の身による人ならざる声を、葵葉は難なく聞き届けてみせる。
常磐色の瞳孔をひらき、口もとを愉悦で歪ませながら。
「心臓を、ぶった斬ればいいんだよな?」
ゆらりと影が揺らぎ、少年のすがたが残像となった。
「行くぞ、そらっ!」
一瞬のうちにふみ込んだ葵葉が、一閃。
振り下ろされた刃が、〝慰〟の左の翼を斬り落とす。
すかさず、下段からの振り上げ。
残る片翼も斬り落とす。
ふき上がるは、緑色の鮮血。
「汚らしいな……さっさと死ね」
低く吐き捨てた刹那、葵葉は漆黒のきっさきで〝慰〟の胸を貫く。
肉でも骨でもない、糸のような繊維を断つ感触が、刃を介してつたわった。
「ギャアアァアアアッ!!」
ひびきわたる断末魔の叫び。
雀の異形がアスファルトをのたうち回る。
真白い光につつまれたそれは、煙のごとく、跡形もなく消え失せた。
おとずれる静寂。
しばしの沈黙ののち、葵葉が嘆息する。
「っはは……あはははっ! やっぱりすごい切れ味だな、さすが俺の姉さまだ!」
『こら! 抜き身の刀にほおずりをするおばかさんがいますか!』
なんと血払いをするなり、満面の笑みを浮かべた葵葉が鼓御前の刀身へほほを寄せてきたのだ。
とっさに切れ味を落とした鼓御前の心境など、ご満悦な葵葉は知るよしもないだろう。


