御刀さまと花婿たち

「身勝手にふるまいすぎたわ。兎鞠島を追いだされるには、じゅうぶんな理由ですね」

 ゆみだけではない。
 ふゆを連れだそうと躍起になっていた親戚はみな、今後一切ふゆとの接触は叶わなくなった。

「このたびは、大変なご迷惑をおかけしました。それなのに、私たちに親身になってくださって……みなさまには、なんとお礼を言ったらいいのか」
「ぼくからもお礼申しあげます。ぼくたちを救ってくださり、ほんとうにありがとうございます……」

 ぜひとも感謝の気持ちをつたえたい。
 ふたりの強い要望があって、今日この場が実現したのだ。

(おふたりの笑顔を、守ることができたのね……)

 それを実感することができ、鼓御前の胸に熱いものがこみ上げる。

「お役に立ててようございました。おふたりは、これからどうなさるのですか?」

 感慨深い思いをいだきつつ、鼓御前は問いかける。
 ちらりと視線を交わすふゆと紫陽。
 やがてふゆが恥じらいがちにうつむき、紫陽が穏やかに言葉をつむいだ。

「このままゆっくりと時のながれに身をまかせます。ふゆの余生に、寄り添うつもりです」

 ふゆに残された時間は、そう長くはないかもしれない。
 けれど紫陽は悲観しない。

「ふゆが人としての生をまっとうしたそのとき、彼女の魂を、ぼくが連れていきます。未来永劫、離れることのないように」
「まぁ……」

 思わずといったように、ひなが声をもらす。
 それは感嘆にも似ている。

「なんと素敵なことでしょう……よかったですね、ふゆおばあちゃま」
「ありがとう、ひなちゃん」

 想いあうがゆえにすれ違ってしまったふたりが、数十年の時をへて、結ばれる。
 深い絆と愛情でつながった彼らのえにしは、だれにもほどくことはできない。

「ずっとそばにいると、紫陽さまは約束してくれました。こんなにうれしいことはないわ」
「ふゆ……」

 淡色の瞳をゆらめかせた紫陽が、ふゆのちいさな肩を抱き寄せる。

「そう、きみとの約束だから……ぼくはずっと、きみのとなりにいるよ。もう離さないからね」

 ふゆと紫陽。
 ふたりを引き離すものは、もうなにもない。
 寄り添うふたりのすがたを、鼓御前はどこかまぶしく思うのだった。