御刀さまと花婿たち

 ふゆと紫陽は、客間に通された。
 桜あんのおはぎが出された座卓をはさみ、向かいに鼓御前と千菊が座る。

「紫陽さまは、どのようにしてこちらに……?」

 みなに茶を出し終えたひなが、盆を胸に抱き、おずおずとたずねる。
 それも無理はない。
 紫陽は桜の木に根づいた精。
 本来なら、桜の木が植えられた庭から遠く離れることはできない。

「ふゆに、ちょっと特別な『贈りもの』をしたんです」

 紫陽はすこしはにかみながら、かたわらのふゆへ視線を落とした。
 そのさきには、ふゆの髪をいろどる花の簪があった。
 紫陽の瞳とおなじ色をした、桜の簪だ。

「ぼくの神気をもとにつくった簪です。これを依代にして、いつでもふゆのそばにいることができます」

 紫陽によると、どうやら今回の一件で、彼の神気が増幅したらしい。
 高い霊力を持つふゆと想いを交わしたことで、力を増したのだ。
 そのためはじめは鼓御前しか視認できなかった紫陽も、ひなが認識できるまで実体化が可能となった。

(紫陽さまからは、『癒やしの力』を感じるわ)

 桜は生命力の象徴。
 紫陽の神気には、癒やしの性質がある。
 ふゆの足取りが以前よりしっかりしているのも、そのためだろう。
 もっとも、特別な理由がなくたって、紫陽はふゆのそばを離れたがらないようだが。

「紫陽さまったら、私がちょっとおさんぽに行くだけでも出ていらっしゃるんですよ。そう何度も転びやしないのに、手を引こうとするの」
「仕方ないじゃないか、片時も離れたくないんだもの!」

 くすくすと笑いをおさえきれないふゆ。
 ふゆにからかわれて、「もう……」とすねる紫陽。

(おふたりとも、とっても仲睦まじいわ)

 和気あいあいとしたふたりを見ていると、なんだか鼓御前まで胸があたたかくなった。

「おからだに問題がないようで、安心しました。ふゆさん、その後はいかがですか」

 千菊の問いを受け、ふゆと紫陽が居住まいをただす。

「ゆみさんたちのことにつきましては、ごぞんじのとおりです」

 門限をやぶる誓約違反。
 桜の木を害する器物損壊行為。
 さらには、島で祀る[[rb:御刀 > おかたな]]さまに対する侮辱罪などなど。
 これにより、ゆみは島の出入りを禁じられた。
 そのことは、千菊を通じて鼓御前も知るところだ。