御刀さまと花婿たち

 その刀がいつの時代に打たれ、どのようにつたわったのか、事の仔細を知る者はいない。

 しかし、ある武士が敵にかこまれたときのこと。
 晴れわたった夏空をたちまちに黒雲が埋めつくし、雷鳴がとどろいた。
 これは竜の怒りだと、だれかがいった。

 男たちは恐れおののき、半狂乱になって逃げだす。
 ただひとり、武士──蘭雪(らんせつ)をのぞいて。

 雷を呼ぶ刀。
 しかれども落雷が刀の持ち主である蘭雪を撃つことは、ついぞなかった。

『蘭雪()るところ、竜の怒り在り』

 蘭雪はこの刀を『鼓御前(つづみごぜん)』と呼び、重用した。
「かの刀があるならば妻は要らぬ」と、まるで夫婦のように寄り添い、愛したのだ。

 これが『鳴神将軍』──蘭雪公と愛刀『鼓御前』をめぐる、逸話である。