御刀さまと花婿たち

「あいつ、目はよく見えていないんじゃないか。その代わり鼻はきくみたいだ。雀のくせに」
「血に反応するとなれば、負傷した莇さんの身が危険です」
「お荷物だな。実力もわきまえず、しゃしゃり出るからだ」
「葵葉!」
「わかってる。さっさとアレを消せば問題ないだろ。それでは、ともにまいりましょうか。お手をどうぞ、(あね)さま?」
「もう……」

 芝居がかった葵葉の言葉に、多少の不安が尾を引くものの。
 やるべきことは、鼓御前もとうに心得ていた。

「〝(ヤスミ)〟の心臓のあたりに、もっとも濃い瘴気を感じます。穢れの『核』……あれを断ち切れば、終わります」
「了解」

 鼓御前は差しだされた葵葉の手を取る。

(わたしは刀)

 何百年もの時をへて人の身を得たとて、その本質は変わらぬ。
 歩みでた葵葉が二度腰を折り、二度手のひらを打ち鳴らす。

「諸々の禍事(まがごと)罪穢(つみけがれ)を祓え(たま)ひ、清め給え。(かむ)ながら守り給い、(さきわ)え給え」

 清流のごとき祝詞(のりと)に、鼓御前のこころの波は凪ぐ。

(かしこ)み畏みをも(もう)す──鼓御前(つづみごぜん)
「──(よろしい)

 (おの)が名を呼ぶ言霊に、応えたなら。
 目のくらむような光が、ほとばしる。
 やがてまばゆい光が集束したとき、葵葉の右手にひと振りの刀がにぎられていた。
 漆黒の刃をもつ、脇差(わきざし)が。