御刀さまと花婿たち

 この世界には、八百万(かぞえきれないほど)の神が存在している。
 太陽、月、海。
 風や火や水、草花にも、神がやどる。
 物をたいせつにすれば、付喪神がやどる。
 青年は、あまたに存在する神の一柱(ひとはしら)
 べつにめずらしくもない桜の木の精にすぎなかった。

「やぁだ~! かえりたくない~!」
『そ、そんなこと言わないで! お父さんとお母さんが心配するでしょ、ねっ!』

 とある夕暮れの日。
 ちいさな女の子が、泣きべそをかきながら駄々をこねはじめるあのときまでは。