異能を持たない花嫁と最強のあやかし

「……桜子(さくらこ)さま。こちらが、桜子(さくらこ)さまのお部屋でございます」
「ここが……」
 案内された部屋は、とても広くて、綺麗な部屋だった。
 篁(たかむら)家にいたときの部屋とは、全く違う。
「そんな……。良いんですか?私が、こんな、良いお部屋を……」
「何言ってるんですか。桜子(さくらこ)さまは、皇(すめらぎ)家の次期当主・桃矢(とうや)さまの花嫁ですよ?これくらいの部屋が普通です」
 皇(すめらぎ)家の次期当主……。
 そうだよね。
 桃矢(とうや)さまは、すごく偉い人。
 そんな人の花嫁が、私だなんて……。

  コンコン

 窓の外から、そんな音がした。
 百合乃(ゆりの)さんが、窓を開ける。
「桜子(さくらこ)さん!」
「……藤佳(とうか)さん」
 窓の外から、ひょこっと顔をのぞかせていたのは、藤佳(とうか)さんだった。
 やっぱり、美しい。
 藤色の髪飾りが、よく似合っている。
「私、桜子(さくらこ)さんの部屋の隣で過ごしてるんです」
「そうなんですか……」
「……藤佳(とうか)さま。まさか、テラスの柵を乗り越えてきたんですか?」
「それ以外ないでしょ?百合乃(ゆりの)」
「危ないのでおやめください。藤佳(とうか)さまは、鳳(おおとり)家のご令嬢なんですから。お怪我でもされたら……」
 藤佳(とうか)さんは、意外とアクティブなようだ。
 鳳(おおとり)家の令嬢には見えない。
「桜子(さくらこ)さん。今から屋敷を案内するので、こちらに来てくれますか?」
「あ、はい……」
 藤佳(とうか)さんが案内してくれるの⁉
 私なんかのために、鳳(おおとり)家のご令嬢が……?
「……もう。藤佳(とうか)さま……!」
「良いじゃない、別に。私だって、桃矢(とうや)さまの花嫁さまと仲良くしたいの」
 私なんかと、仲良くしたいと思ってくれているなんて……!
「……はあ。仕方ありませんね。桜子(さくらこ)さま。隣の、藤佳(とうか)さまのお部屋に行ってきてください。私は、この部屋の整理と掃除をしておりますので」
「さすが百合乃(ゆりの)!話が早い!」
 藤佳(とうか)さまのペースに乗せられている気がする……。