異能を持たない花嫁と最強のあやかし

「ここだ」
 着いたのは、とても大きなお屋敷の前だった。
 篁(たかむら)家の屋敷とは、比べ物にならないくらい大きい。
 ……さすが、あやかしの頂点……。
「おかえりなさいませ。桃矢(とうや)さま、桜子(さくらこ)さま」
 門の奥では、使用人たちがずらっと並び、お辞儀している。
 すごい……。
 あやかしの頂点、恐るべし……。
「……おいで、桜子(さくらこ)」
「はい……」
 色々なものに圧倒されながら、桃矢(とうや)さまの後をついていく。
「……こちらが、京(かなどめ) 百合乃(ゆりの)。桜子(さくらこ)の専属使用人になる」
「よろしくお願いいたします、桜子(さくらこ)さま」
「よ、よろしくお願いします……」
 百合乃(ゆりの)さんは、少し薄い桃色の着物を着ていて、それはそれはよく似合っていた。
「……桃矢(とうや)さま!……と、花嫁さま?」
「藤佳(とうか)」
 鳳(おおとり) 藤佳(とうか)さん。
 皇(すめらぎ)の筆頭分家である鳳(おおとり)家の令嬢。
 とても美しくて、華やかな人だ。
「……は、はじめまして。……篁(たかむら) 桜子(さくらこ)と申します」
「はじめまして。鳳(おおとり) 藤佳(とうか)です。今は、なんていうか……、喧嘩中で、皇(すめらぎ)家のお屋敷にお邪魔してます。よろしくね」
「よろしくお願いします……」
 長い黒髪。
 大きくて、黒い瞳。
 その瞳に、吸い込まれそうになる。
 ……やっぱり、あやかしは、人を惹きつける力を持っている。
 そして……。
「……桃矢(とうや)」
「父さん……」
 一番奥からやって来たのは、桃矢(とうや)さまのお父さまの李月(りづき)さまと、お母さまの菊音(きくね)さま。
「……お前も、出会えたんだな」
「そうだよ、父さん。……俺も、もう一人前のあやかしだ」
 李月(りづき)さまも、菊音(きくね)さまも、表情が読めない。
「……そうかもな」
「……桜子(さくらこ)さん。桃矢(とうや)を、よろしくお願いします」