ふと、気が付けば器は空になっていた。
最後の一滴までスープを飲み干し、満足そうに息をつく。
「ごちそうさまでした」
ハンカチで汗を拭うと席を立ち、何気なくテーブル席へ目を向ける。
花村さんの姿は、もうなかった。
いつの間に帰ったんだろう。
声が掛からなかったのたがら、私に気付かなかったと言う事だろう。
「お会計お願いします」
レジのカウンターに伝票を置き財布を取り出そうとすると、店員さんが首と手を横に振る。
「お代はもう貰ってるんで」
「……え?」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。頭の上にいくつもの疑問符が浮かぶ。
「テーブル席にいた男性のお客さんがお姉さんの分もって」
「テーブル席の男性?」
花村さんだ!彼が支払ってくれていたのだ。
だからって、飲み食いした分を払わないなんてできない。
私はお財布から五千円札を一枚取り出してカルトンに置く。
「いや、もう頂いてるんで困ります!」
借りを作るのは好きじゃない。
しかも会食以外でクライアント相手にご馳走になるなんて、なおさらだ。
でも、その気遣いは素直に嬉しい。なかなか出来る事ではない。
「……本当にいいんですか?」
「もちろんです」
(ごちそうさまです、花村さん)
私は心の中でお礼を言った。
店を出ると、札幌の夜風がスパイスで火照ったからだを心地よく冷ましてくれる。
賑わうススキノの歓楽街を歩いて戻っていると、お洒落な看板が目に留まる。
「夜パフェかぁ、おいしそう」
数年前から流行っているらしい、飲んだ後の締めのパフェ。
せっかく北海道に来たんだし、もう一軒だけ行きたい。
でも、もうすでにお腹がいっぱいだ。
「今度来た時にしよう」
そう自分に言い聞かせ、後ろ髪を引かれる思いで通り過ぎる。
ホテルへ戻る頃には、さすがに眠気が押し寄せてきた。
急いで部屋着に着替え、ベッドへ腰を下ろしてスマートフォンを開く。
花村さんに、お礼を伝えなきゃ。
そう思ってメッセージを打ち始める。
『今日はありがとうございました……』
瞼が落ちてくる。仕事の疲労感と食後の満腹感には抗えない。
スマートフォンを胸の上に置いたまま横になると、次の瞬間には、深い眠りへ落ちていた。
最後の一滴までスープを飲み干し、満足そうに息をつく。
「ごちそうさまでした」
ハンカチで汗を拭うと席を立ち、何気なくテーブル席へ目を向ける。
花村さんの姿は、もうなかった。
いつの間に帰ったんだろう。
声が掛からなかったのたがら、私に気付かなかったと言う事だろう。
「お会計お願いします」
レジのカウンターに伝票を置き財布を取り出そうとすると、店員さんが首と手を横に振る。
「お代はもう貰ってるんで」
「……え?」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。頭の上にいくつもの疑問符が浮かぶ。
「テーブル席にいた男性のお客さんがお姉さんの分もって」
「テーブル席の男性?」
花村さんだ!彼が支払ってくれていたのだ。
だからって、飲み食いした分を払わないなんてできない。
私はお財布から五千円札を一枚取り出してカルトンに置く。
「いや、もう頂いてるんで困ります!」
借りを作るのは好きじゃない。
しかも会食以外でクライアント相手にご馳走になるなんて、なおさらだ。
でも、その気遣いは素直に嬉しい。なかなか出来る事ではない。
「……本当にいいんですか?」
「もちろんです」
(ごちそうさまです、花村さん)
私は心の中でお礼を言った。
店を出ると、札幌の夜風がスパイスで火照ったからだを心地よく冷ましてくれる。
賑わうススキノの歓楽街を歩いて戻っていると、お洒落な看板が目に留まる。
「夜パフェかぁ、おいしそう」
数年前から流行っているらしい、飲んだ後の締めのパフェ。
せっかく北海道に来たんだし、もう一軒だけ行きたい。
でも、もうすでにお腹がいっぱいだ。
「今度来た時にしよう」
そう自分に言い聞かせ、後ろ髪を引かれる思いで通り過ぎる。
ホテルへ戻る頃には、さすがに眠気が押し寄せてきた。
急いで部屋着に着替え、ベッドへ腰を下ろしてスマートフォンを開く。
花村さんに、お礼を伝えなきゃ。
そう思ってメッセージを打ち始める。
『今日はありがとうございました……』
瞼が落ちてくる。仕事の疲労感と食後の満腹感には抗えない。
スマートフォンを胸の上に置いたまま横になると、次の瞬間には、深い眠りへ落ちていた。
