四月の札幌の夜はずいぶんと冷える。ホテルを出ると、ひんやりとした空気に思わず身震いした。
私はショルダーバッグを掛け直し、すすきの方面へ歩き出す。
スニーカーに履き替えたので、足取りも軽い。
地下鉄に乗ればあっという間だけど、街を歩くと毎回新しい発見がある。
テレビ塔のライトアップを横目に見ながら、さらに進む。路面電車がカタン、カタンと音を立てて通り過ぎ、頬を撫でる風が心地いい。
「……方向合ってるかな」
途中で不安がよぎり思わず呟く。
数えきれないくらい訪れている札幌の街も昼と夜では装いが変わる。
信号待ちでスマートフォンの地図アプリを開いた。
目指すのは、以前札幌へ来たときに見つけたスープカレーのお店。
あの日は店の前まで来たものの、長い行列を見て諦めてしまった。
だから今日は、そのリベンジ。
「今日は絶対に食べるんだから!」
自然と足取りが速くなる。
狸小路を抜けると、街の表情が少しずつ変わっていく。
賑やかな大通りから一本路地へ入れば、個人店が肩を寄せ合うように並んでいる。
ジンギスカン、鮨に海鮮居酒屋、味噌ラーメン。
魅力的な店につい心が揺れ動く。
……でも、今日は浮気しない。
しばらく歩くと、小さな木の看板が見えてきた。
「あった」
思わず笑みがこぼれる。
今夜は行列がない。ガラス越しに店内を覗くと、席も空いていた。
「ラッキー!」
深呼吸をひとつして木の扉を押す。カラン、とベルが鳴った。
「いらっしゃい!」
木目調の落ち着いた空間に、スパイスの香りがふわりと漂う。
クミン、カルダモン、炒め玉ねぎの甘い香りが鼻をくすぐり、思わず頬が緩んだ。
……これは期待できる。匂いがすでにおいしいもん!
「こんばんは、ひとりなんですけど」
「こちらへどうぞ」
案内されたのは厨房がよく見えるカウンター席。
私はバッグを足元のカゴへ置き、壁際のフックにパーカーを掛けた。
目の前では、大きな寸胴鍋から湯気が立ち上り、店主が手際よく野菜を揚げ、スープを温めている。
このライブ感も、カウンター席の醍醐味だ。
ワクワクしながらメニューを手に取る。
メインの具材、スープ、辛さ、トッピング、ライスの量が選べるらしい。
スープカレー店によくあるシステム。
「うーん、どれにしよう」
チキンレッグ、角煮、ハンバーグ。限定のラムも気になる。
スープはオリジナル、えび、豚骨、トマトも美味しそう。
辛さは五番、いや、別料金で六番にチャレンジするか。
ライスはターメリック一択で。
「……困った」
仕事なら即決なのに、オフの時はポンコツだ。
あー、全部食べたい。
「お決まりでしたら、お声がけくださいね」
店員さんがレモン水を置きながら微笑む。
「あ、はい。もう少しだけ……」
もう一度メニューを見つめる。
絶対に後悔したくない。
数分悩んで、ようやく決心した。
「注文お願いします」
「はい」
「煮込みチキンレッグと道産野菜で。スープはオリジナル、辛さ五番、ライスはターメリックのLサイズで……」
ドリンクをどれにしようか一瞬だけ迷う。でも、もうオフだ。仕事は片付けてきた。
「あー、あと、生ビールもお願いします」
「はい、少々お待ちくださいっ」
あとは待つだけ。
目の前で出来上がっていく一皿を眺めながら、私は静かに期待を膨らませた。
私はショルダーバッグを掛け直し、すすきの方面へ歩き出す。
スニーカーに履き替えたので、足取りも軽い。
地下鉄に乗ればあっという間だけど、街を歩くと毎回新しい発見がある。
テレビ塔のライトアップを横目に見ながら、さらに進む。路面電車がカタン、カタンと音を立てて通り過ぎ、頬を撫でる風が心地いい。
「……方向合ってるかな」
途中で不安がよぎり思わず呟く。
数えきれないくらい訪れている札幌の街も昼と夜では装いが変わる。
信号待ちでスマートフォンの地図アプリを開いた。
目指すのは、以前札幌へ来たときに見つけたスープカレーのお店。
あの日は店の前まで来たものの、長い行列を見て諦めてしまった。
だから今日は、そのリベンジ。
「今日は絶対に食べるんだから!」
自然と足取りが速くなる。
狸小路を抜けると、街の表情が少しずつ変わっていく。
賑やかな大通りから一本路地へ入れば、個人店が肩を寄せ合うように並んでいる。
ジンギスカン、鮨に海鮮居酒屋、味噌ラーメン。
魅力的な店につい心が揺れ動く。
……でも、今日は浮気しない。
しばらく歩くと、小さな木の看板が見えてきた。
「あった」
思わず笑みがこぼれる。
今夜は行列がない。ガラス越しに店内を覗くと、席も空いていた。
「ラッキー!」
深呼吸をひとつして木の扉を押す。カラン、とベルが鳴った。
「いらっしゃい!」
木目調の落ち着いた空間に、スパイスの香りがふわりと漂う。
クミン、カルダモン、炒め玉ねぎの甘い香りが鼻をくすぐり、思わず頬が緩んだ。
……これは期待できる。匂いがすでにおいしいもん!
「こんばんは、ひとりなんですけど」
「こちらへどうぞ」
案内されたのは厨房がよく見えるカウンター席。
私はバッグを足元のカゴへ置き、壁際のフックにパーカーを掛けた。
目の前では、大きな寸胴鍋から湯気が立ち上り、店主が手際よく野菜を揚げ、スープを温めている。
このライブ感も、カウンター席の醍醐味だ。
ワクワクしながらメニューを手に取る。
メインの具材、スープ、辛さ、トッピング、ライスの量が選べるらしい。
スープカレー店によくあるシステム。
「うーん、どれにしよう」
チキンレッグ、角煮、ハンバーグ。限定のラムも気になる。
スープはオリジナル、えび、豚骨、トマトも美味しそう。
辛さは五番、いや、別料金で六番にチャレンジするか。
ライスはターメリック一択で。
「……困った」
仕事なら即決なのに、オフの時はポンコツだ。
あー、全部食べたい。
「お決まりでしたら、お声がけくださいね」
店員さんがレモン水を置きながら微笑む。
「あ、はい。もう少しだけ……」
もう一度メニューを見つめる。
絶対に後悔したくない。
数分悩んで、ようやく決心した。
「注文お願いします」
「はい」
「煮込みチキンレッグと道産野菜で。スープはオリジナル、辛さ五番、ライスはターメリックのLサイズで……」
ドリンクをどれにしようか一瞬だけ迷う。でも、もうオフだ。仕事は片付けてきた。
「あー、あと、生ビールもお願いします」
「はい、少々お待ちくださいっ」
あとは待つだけ。
目の前で出来上がっていく一皿を眺めながら、私は静かに期待を膨らませた。
