昔話に花が咲き、先輩の家を出る頃にはもう日が沈んでいた。
呼んでもらったタクシーに乗り博多駅へと戻る。
「すみません、お勧めのラーメン屋さんてありますか?」
運転手さんにそう問いかけると、「ありますよ」と一言。
「じゃあ、そこまでお願いします!」
この一帯を知り尽くしているタクシーの運転手さんなら美味しい店を知っているに違いない。しかも即答だったので期待が持てる。
しばらくして、タクシーはガード下に停まった。
「お客さん着きましたよ!」
「ありがとうございます」
お礼を言って支払いを済ませる。
車を降りる私に、運転手さんは笑顔で言った。
「観光ガイドには載らんちゃけど、仲間内では人気ばい!」
地図アプリで見ると駅からは少し遠い。土地勘がないとたどり着けないだろう。
なるほど、ここはかなりの穴場だ。
暖簾をくぐると威勢のいい掛け声で出迎えられる。
「らっしゃい! 食券を買ってから空いてる席へどうぞ!」
カウンター七席のみのこじんまりとした店。
お客さんは黙々とラーメンをすすっている。回転が速そうだ。
私は豚骨チャーシュー麺を選ぶ。
「お願いします」
席に座り食券をカウンターの上に置く。
「お好みは?」
と麺の硬さを聞かれる。私は、「普通で」と答えた。
一杯目は普通がお勧めとどこかのグルメ雑誌に書いてあった。替え玉から好みも硬さで注文するのだという。
ほどなくして、どんぶりが目の前に置かれる。
「はい、豚骨チャーシュー。お待たせしました!」
白濁したスープの上に崩れ落ちそうなチャーシュー。ネギと刻んだきくらげ、紅ショウガが乗っている。
(うわー、おいしそう!)
割りばしとレンゲを取る。
まずはスープ。豚骨特有の濃厚な香りを湯気と共に吸いこむ。
スープはこってりしていて油の甘みを感じる。それでいてしつこさはなく塩気とのバランスがいい。
すぐに麺を持ち上げた。細めの面にしっかりとスープを絡ませて豪快にすする。
――熱い。でも旨い。硬さもちょうどいい。つるりとしているのに歯ごたえを感じる。
次はチャーシュー。赤身と脂身のバランスが絶妙だ。崩れないように慎重に箸で挟むとパクリと頬張った。
「うわっ、やわらかっ」
思わず声に出るほどに柔らかく、肉のうまみもしっかりと感じる。けれどスープや麺とちゃんと調和している。
箸が止まらず、替え玉を考えた。
でも、今日はやめておこう。
なぜだろう。胸の奥がつかえがとれない。
店を出ると宿泊しているホテルへ足を向けた。
わりと距離はありそうだけれど、なんとなく歩きたい気分だ。
