西園寺さんの出張めし

第四話 名古屋モーニングと恋心

 毎日がせわしなく過ぎていく。沖縄で梅雨入りが宣言されたと聞き、私は少し憂鬱な気持ちに襲われる。

東京駅始発の新幹線に乗り、名古屋で降りる。

今日は美容学校でのマナー講習。仕事まで少し時間があった私は、地下鉄で栄まで移動する。

お目当てはモーニングが食べられる喫茶店。新緑の季節を味わいながら大通公園を通り過ぎる。

「あ、ここにしようかな」

 目についたのは路地裏に佇む昭和レトロな純喫茶。色あせたのぼりにはモーニングの文字。

扉を開けると、コーヒーの香りがふわりと広がる。カラン、とドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませー。お一人?」

 奥から明るい声が飛んでくる。

「はい」

「じゃあ、こちらどうぞ」

 案内してくれたのは眼鏡をかけた年配の女性。

窓際の席に座ると、朝の光がテーブルに斜めに落ちていた。店内には豆を挽く音やカップの触れる音が心地よく響いている。

「何にしましょう?」

「ブレンドコーヒーと、そうだな……おすすめはありますか?」 

「エビカツサンドが人気だけど、定番の小倉トーストも美味しいよ。サラダとゆで卵がセットで付くからね」

 エビカツに気持ちが揺れたが、やはりここは定番でいこう。

「では、小倉トーストをおねがいします」

「小倉ね。ちょっと待っててね」

 女性は軽やかに奥へ戻っていく。

途中で男性客さんから「ママ!」と呼び止められる。常連客だろうか。おしゃべりに花が咲いている。

こういった交流も喫茶店の醍醐味なのだろう。

私は手持無沙汰になり、カバンからスマホを取り出す。

この後向かう専門学校の情報を見返した後、メッセージ画面をタップする。