ここでお昼をひとりで食べるのは今週2回目。
一緒に授業を受けた子も、今日は別の友達とお昼を食べるらしい。
図書館前のテラス。
ここは少しほっとする。
私みたいにひとりの人もそれなりにいる。
ひとりでいることがそんなに目立たない。
だけど。
どうしても楽しそうに友達と話す人たちが目に入る。
楽しそうだな。
そう思ったとたん、パンがおいしくなくなる。
オリエンテーションの日に連絡先を交換した子がふたりいる。
一緒の授業なら一緒に座るし、話しかければ普通に話してくれる。
だけど、ふたりがけの席なら私は余る方。
一緒にいるだけ。
しかもふたりは同じサークルだから、お昼になると、
「ごめん、今日はサークルの子たちと食べることになってて」
と笑って手を振られる。
悪い子たちじゃない。
ただ、なんとなく居場所がない。
私だけ置いてけぼりになったように感じてしまう。
友達作るのって、
こんなに難しかったっけ?
小中高、今までいつの間にか仲の良い友達ができて楽しく過ごしてきた。
友達と映画行ったり、カラオケ行ったり。
恋バナで盛り上がったり。
この大学のオープンキャンパスだって高校の友達と来た。
都会の私大のキャンパスはきれいで、学生たちも楽しそうで、すべてがきらきらしていた。
頑張って勉強して、私もここで充実したキャンパスライフを送ろうって思った。
入学できれば私も仲間入りできると思ってた。
なのに。
どうして私はまだ、きらきらの外にいるんだろう。
大きく息を吐く。
カフェオレを飲もうとして顔を上げると、いつの間にか隣のテーブルに一人の男性が座っていた。
思わず目が止まった。
すらりとした男性が脚を組んで飲み物を飲んでいる。
ゆるいパーマのかかった長い髪はひとつに束ねられていた。
先生、かな?
あまりじろじろ見てはいけないと思いつつも、どうしても気になってちらちら見てしまう。
学生って年齢じゃなさそうだし、でも、先生っぽくもないし。
外部の人かな。
美容師とか?
デザイナーとか?
そんなことを思っていたら、その人と目が合ってしまった。
「ん?」
「あ、いえ、なんでもないです、すみません」
「なんかついてる?」
「あ、いえ」
体の前で勢いよく両手を振った。
……。
あ。
しまった。
せっかく話しかけてくれたのに。
このまま終わるのはなんだかもったいない気がして、小さく息を吐いた。
「あのっ」
「ん?」
「先生、ですか?」
「うん、一応」
「あ、」
そうなんだ。
先生なんだ。
「ん?」
「いや……先生っぽくないなと思って」
するとその先生は笑った。
「何に見えた?」
「美容師さん、とか」
「ああ、それたまに言われる」
先生は楽しそうにうんうんと頷いた。
「君は、1年生?」
「はい。え、どうしてわかるんですか?」
「雰囲気、かな」
「雰囲気?」
「うん、まだ大学に慣れてない感じ」
「あー」
授業とかには慣れてはきたけど。
「慣れない?」
「うーん……」
先生は首を傾げている。
どうしよう。
この先生なら話してもいいかな。
「……高校とは、全然違いますね」
「何が一番違う?」
「友達です」
「あー」
先生は少し頷いた。
「できない?」
「いえ、いるにはいるんです」
「うん」
「でも……」
次の言葉が出てこない。
「その子たちと一緒にいて楽しい?」
「……」
「気を遣う?」
私は小さく頷いた。
「私、高校では普通だったのに」
「普通?」
「友達もいて、毎日楽しくて」
「うん」
「だから大学でも普通に友達できると思ってました」
「うん」
先生は静かに頷いて、私の言葉をちゃんと受け止めてくれた。
大学にも、こんな先生いるんだ。
「君はさ」
「はい」
「高校では友達作れたんだよね?」
「はい」
「じゃあ君は友達を作れない人じゃない」
そう言って穏やかな笑顔を向けた。
胸がきゅっとした。
「大学ってね、4月にできた友達だけで4年間過ごす人ばかりじゃないよ」
「え?」
「ゼミだったり、実習だったり、バイトだったり。友達ができるきっかけって、意外と後から来る」
「そうなんですか?」
「僕はそういう学生をたくさん見てきた」
そう言うと先生は小さく頷いた。
そうなんだ。
先生は私みたいな学生をたくさん見てきたんだ。
私だけじゃないんだ。
先生は残っていた飲み物を飲み干し立ち上がった。
背が高い。
「あの」
「ん?」
「先生のお名前、聞いてもいいですか?」
「法学部の君島です」
そう言うと姿勢を正して一礼してくれた。
思わず立ち上がり、私も一礼する。
「あ、戻らなきゃ」
そう言ってさっそうと去っていった。
君島先生の背中を見送りながら、私は小さく笑った。
一緒に授業を受けた子も、今日は別の友達とお昼を食べるらしい。
図書館前のテラス。
ここは少しほっとする。
私みたいにひとりの人もそれなりにいる。
ひとりでいることがそんなに目立たない。
だけど。
どうしても楽しそうに友達と話す人たちが目に入る。
楽しそうだな。
そう思ったとたん、パンがおいしくなくなる。
オリエンテーションの日に連絡先を交換した子がふたりいる。
一緒の授業なら一緒に座るし、話しかければ普通に話してくれる。
だけど、ふたりがけの席なら私は余る方。
一緒にいるだけ。
しかもふたりは同じサークルだから、お昼になると、
「ごめん、今日はサークルの子たちと食べることになってて」
と笑って手を振られる。
悪い子たちじゃない。
ただ、なんとなく居場所がない。
私だけ置いてけぼりになったように感じてしまう。
友達作るのって、
こんなに難しかったっけ?
小中高、今までいつの間にか仲の良い友達ができて楽しく過ごしてきた。
友達と映画行ったり、カラオケ行ったり。
恋バナで盛り上がったり。
この大学のオープンキャンパスだって高校の友達と来た。
都会の私大のキャンパスはきれいで、学生たちも楽しそうで、すべてがきらきらしていた。
頑張って勉強して、私もここで充実したキャンパスライフを送ろうって思った。
入学できれば私も仲間入りできると思ってた。
なのに。
どうして私はまだ、きらきらの外にいるんだろう。
大きく息を吐く。
カフェオレを飲もうとして顔を上げると、いつの間にか隣のテーブルに一人の男性が座っていた。
思わず目が止まった。
すらりとした男性が脚を組んで飲み物を飲んでいる。
ゆるいパーマのかかった長い髪はひとつに束ねられていた。
先生、かな?
あまりじろじろ見てはいけないと思いつつも、どうしても気になってちらちら見てしまう。
学生って年齢じゃなさそうだし、でも、先生っぽくもないし。
外部の人かな。
美容師とか?
デザイナーとか?
そんなことを思っていたら、その人と目が合ってしまった。
「ん?」
「あ、いえ、なんでもないです、すみません」
「なんかついてる?」
「あ、いえ」
体の前で勢いよく両手を振った。
……。
あ。
しまった。
せっかく話しかけてくれたのに。
このまま終わるのはなんだかもったいない気がして、小さく息を吐いた。
「あのっ」
「ん?」
「先生、ですか?」
「うん、一応」
「あ、」
そうなんだ。
先生なんだ。
「ん?」
「いや……先生っぽくないなと思って」
するとその先生は笑った。
「何に見えた?」
「美容師さん、とか」
「ああ、それたまに言われる」
先生は楽しそうにうんうんと頷いた。
「君は、1年生?」
「はい。え、どうしてわかるんですか?」
「雰囲気、かな」
「雰囲気?」
「うん、まだ大学に慣れてない感じ」
「あー」
授業とかには慣れてはきたけど。
「慣れない?」
「うーん……」
先生は首を傾げている。
どうしよう。
この先生なら話してもいいかな。
「……高校とは、全然違いますね」
「何が一番違う?」
「友達です」
「あー」
先生は少し頷いた。
「できない?」
「いえ、いるにはいるんです」
「うん」
「でも……」
次の言葉が出てこない。
「その子たちと一緒にいて楽しい?」
「……」
「気を遣う?」
私は小さく頷いた。
「私、高校では普通だったのに」
「普通?」
「友達もいて、毎日楽しくて」
「うん」
「だから大学でも普通に友達できると思ってました」
「うん」
先生は静かに頷いて、私の言葉をちゃんと受け止めてくれた。
大学にも、こんな先生いるんだ。
「君はさ」
「はい」
「高校では友達作れたんだよね?」
「はい」
「じゃあ君は友達を作れない人じゃない」
そう言って穏やかな笑顔を向けた。
胸がきゅっとした。
「大学ってね、4月にできた友達だけで4年間過ごす人ばかりじゃないよ」
「え?」
「ゼミだったり、実習だったり、バイトだったり。友達ができるきっかけって、意外と後から来る」
「そうなんですか?」
「僕はそういう学生をたくさん見てきた」
そう言うと先生は小さく頷いた。
そうなんだ。
先生は私みたいな学生をたくさん見てきたんだ。
私だけじゃないんだ。
先生は残っていた飲み物を飲み干し立ち上がった。
背が高い。
「あの」
「ん?」
「先生のお名前、聞いてもいいですか?」
「法学部の君島です」
そう言うと姿勢を正して一礼してくれた。
思わず立ち上がり、私も一礼する。
「あ、戻らなきゃ」
そう言ってさっそうと去っていった。
君島先生の背中を見送りながら、私は小さく笑った。



